薪ストーブの安全を考えると本体の気密が大切だと言うお話
2019年の年末は2件の納品と1月に納品予定の製作に忙殺されてブログの更新が過去最高に少なくなっちゃいました。
その代わり頑張って仕事に励んだ甲斐もあり、全て目標まで完了させることが出来、落ち着いた気分で新年を迎えてます。
さて今回は薪ストーブの気密性と安全性について個人的な感想を書きたいと思います。
DIYレベルの自己責任で使用するのであれば気密性など二の次で好きなようにデザインすれば良いけど、炎を思った通りにコントロールしようと思ったり、気密の高い住宅で使用する場合などは本体の気密がとても重要になってきます。
ストーブに隙間がある弊害
安全性編
個人的な見解だと、まず第一に炎を安全にコントロールできることを最優先に考えてストーブをデザインしなければだめだと思います。
沢山の薪をストーブに投入して燃焼室が高温になり、空気を絞ろうが、ダンパーを閉じようが火力調節が出来なくなる熱暴走と言う状態に陥る事はあってはならない。
薪ストーブ本体に隙間があると、いくら吸気口を絞っても空気が隙間からグングン吸い込まれるので窒息状態へ操作できません。
隙間が生じる理由は大きく2つ有って意図的な物と経年劣化です。
意図的な隙間の代表格が、窓ガラスの曇り止め防止を簡略化するために窓ガラスを取り付けるガスケットの一部を除去してエアカーテンとする構造になります。
複雑な機構を作ることなく、ガラスの隙間から空気を吸い込み耐熱ガラスへ吹き付ける事でガラスの曇りを防ぐのですが、この形だと炎を窒息させることが不可能なのは自明である。
経年劣化はガスケットが摩耗して本体の気密が不足する、本体に熱疲労でヒビが入るなど使っているうちに隙間が発生する事です。
どちらの事例でも燃焼室とお部屋の間を自由に空気が通過できる状態になる事で、思いのままに炎がコントロールできなくなる。 普段使いでは、空気をしぼってゆっくり燃やそうと思い吸気口を絞っても隙間から空気を吸うのでスロー運転が出来ない。
どちらにせよ、熱暴走状状態に陥り大きな炎を全くコントロールできない状態は恐怖だろう。
物理的な対応として、水の代わりに砂を燃焼室へ投げ入れれば消火できるけどそのような道具に頼るのではなく構造的な窒息システムが必要だと思います。
だから燃焼室に隙間があっても薪を燃やすことに関しては問題ないから大丈夫だと考えるのは非常に危険な考えだと僕は思っています。
お部屋の中で炎を焚く以上暖かさを提供する以前に、安全を最優先にしたデザインが当たり前じゃないかな?
ヒミエルストーブの対応
先ずは論より証拠。
熱暴走の疑似状態から窒息させた動画をご覧ください。
3分くらいかかりましたが、吸気口を絞って鎮火する事がお分かりになるでしょうか。
この様な操作が出来るのは空気取り入れ口が1か所に集約され、燃焼室の気密が確保されているので可能になります。
前述した様に、本体に少しでも隙間があれば炎を鎮火させることは不可能です。
吸気口は外気導入アダプターに対応しているから、新築の高気密住宅でも問題無く運用できます。
アルミのジャバラに手を触れてみると、ものすごく冷たかったので、普段意識しないけど薪ストーブを使っていると換気扇の様に多くの冷たい外気を吸い込んでいるのだと認識出来ました。
KD01は冷たい空気をダイレクトに燃焼室へ送るのではなく、本体の床面と背面を通過させることで冷たい外気を余熱し、燃焼効率向上を狙っています。
まとめ
薪ストーブを選定する時は値段や大きさなど数値で比較できるスペックばかり目が行くし、何をもって比較対象とすべきなのか難しと思います。
薪ストーブはモデル毎に特性が異なるので、有名な輸入物だとユーザーの導入ブログを読めばある程度想像できるけど、僕のような個人ビルダーが作っている物は直接製作者にデータを聞く以外方法が無いのが現状です。
ここから先は僕が体験した上で得た知見なのですが、
最初から市販品に近い、隙のない完成品など作ることは不可能です。
KD01はサンプル品を完成させた後、多くの人から多様なダメ出しと要望をもらった上で課題をひとつづつ解決しました。
そこで大切なのは課題を解決する設計力は当然として、多様な要望を素直に受け止める姿勢では無いでしょうか? とかく僕を初めとする製作者と言う人種は自負や思い入れが強くなりすぎて、他者からの助言を否定と勘違いしやすい。
自分で作って使うだけだとそれでもいいかも知れないけど、意識の対象が自分に向いている限り自分の気づく範囲から抜け出すことなど不可能だ。 しかし、最終ユーザーの利便性を第一に考えるのであれば些細な要望であっても大きなヒントに繋がるし、実際に多くの学びをお客様から得ました。
なので、「薪ストーブ」と言う製品を売っている様で、実は製作者の姿勢を表した作品じゃないかと強く感じます。
家の建築や中古車選びと同じで、先ずは安全快適を優先した提案ができる人を選ぶことが大切じゃないかと思った新年第一回目の記事でした。