ヒミエルストーブ

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2重煙突とシングル煙突の比較実験から感じた事

 
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現代の薪ストーブ設置に於いて2重煙突の設置は防火の観点のみならず効果的な燃焼に必須のアイテムだと思っています。それは僕の単なる感想であって煙突を販売したいポジショントークでしょう、などと書かれた記事を読んだことが有りますが何事も理由が有って発言しているので残念ながら完全なポジショントークではございません。

 

そんな時には実験を行い、データを突合すれば疑問が氷解するので残暑厳しい9月初旬に2重煙突とシングルの燃焼比較実験を行いました。

先ず私が求める理想的な燃焼と言うのはネタ元がございまして

公害対策技術同友会発行、三好 康彦著作、「小型焼却炉-選定と維持管理-」の中に記述されている燃焼理論を実際の製品に落とし込んだ物となっております。

ここで子細に渡り理論を語ってしまうと一気に眠たくなる方が多いと思いますので大切なエッセンスを3つ挙げると

1)ガスと空気を良く混合させる事

これはサイクロンチューブで実装済

2)燃焼温度を高くする事

ヒートライザーに炎が集まって高温を生成

3)燃焼室内滞留時間が一定程度ある事

排気を絞り空気の流速を抑制

 

公害対策技術同友会 小型焼却炉選定と維持管理 三好 康彦著 P13より引用

となっておりヒミエルストーブは理想的な燃焼を実装する構造を本体に組み込んでいます。ちなみにこの様な構造を実装して良好な燃焼状態を維持出来る構造を持った薪ストーブは私の知る限り殆ど存在しません。

 

そして一歩踏み込んで所感を述べるとするならば、現在世界中で多くの薪ストーブが販売されており各々が性能や利便性を喧伝されておりますが、いくら本体が高額であったとしても煙突とのバランスが悪ければ本体の性能を発揮する事は出来ません。 この場合の性能とは私が理想とする「しっかりと本体を昇温し、空気の流れを遅くすることで緩やかな燃焼サイクルを継続する」状態を指し示します。

 

 

煙突って単なる筒に見えるし、ロケットストーブはシングルでOKと言う考えも有りますが私の考えとしては、不可では無いけど最良では無いと考えます。

では本体が同一で煙突だけ交換すると何が変わるのかと言えば上昇気流の大きさが如実に変化します。

上昇気流の変化なんて大したことないじゃ無くて、もっと大切なのは予算管理だとお考えの方が私も含めいらっしゃると思うのですが実はランニングコストに大きく関与する事になるので非常に大切な概念です。

 

一般的に煙突を保温する理由は管内の温度を保温する事で暖かい上昇気流を維持すると言う事になります。

簡略な概念で説明すれば煙突は換気扇の役割を果たし、外部から燃焼室へ空気を吸い込むエンジンの役割を果たします。

管内体積の平均気温が高ければ高い程吸引力が強く、冷めるほどに弱くなりこれは煙突効果と言う計算式で導く事が出来るので論点が発生するポイントではございません。

 

では私が考える論点と言うのはシングル煙突で十分運用できるのに高価な2重煙突を導入する意義があるのかという議論が真っ先に思い浮かびます。

上記のトピックは机上の理論を紡ぎ合わせて必要、不要、双方の理論を表明する記事を今まで沢山読みましたが、同じストーブを使用して比較実験を行った結果を見たことは有りません。

ここまでの話を整理すると、2重煙突は管内を保温できるので上昇気流の力を維持できるのに対し、シングル煙突は排気を絞ると上昇気流が弱くなって利用とする燃焼状態を維持出来ないと言うことが果たして本当なのかと言う疑問を整理したいと思います。

これは比較ドラフトの実測値グラフになります。

2重煙突のドラフトが1時間15分に10から5程度に低下しているのは巡行運転に突入したと判断してダンパーを絞った運用を行ったからこの様な結果になりました。(この場合の実測値は負圧なので実際は-10paから-5paに低下しています)

上記の結果からも明らかな様にダンパーを絞る事で上昇気流を低下させ、吸気量を抑制し、炉内の燃焼速度を遅延させることは、長時間燃焼を実現する為の必須事項だと言うのが私の立ち位置であります。

ですので、巡行運転に入りダンパーを絞った運用では燃料のオガライトを投入するサイクルは約30分に1回投入すれば十分でした。

 

そして青いグラフの線はシングル煙突のドラフトプロットになります。

まず最初にシングル煙突を使用してダンパーを絞り2重煙突並みにドラフトを低下させると操作を実施した直近では目視できる変化は発生しないけど管内が冷めて来ると急激に煙が大量発生して理想とする燃焼状態を維持する事が出来ませんでした。

なにが言いたいかと言えばシングル煙突での運用は燃費を良くする排気を絞ったスロー運転を行う事が困難であると言う事です。 そして排気を絞らずに薪を絶えず投入するので不必要に本体を昇温させるばかりでなく15分に1本薪を消費するので絶えず燃焼室の状態を確認しなくてななりませんでした。

そして燃焼温度が高温になってしまうので煙突管内の負圧が-15paまで上昇し、多くの暖気を屋外へ排出してしまうのです。貧乏性の私としては、せっかく長い時間かけて準備した薪があっという間に燃えてしまうと伴に発生した熱量も屋外へ排出してしまうなんて非常に勿体ない状態だと感じます。

ここで判明するのは、シングル煙突での運用は不可能ではないが運用に多大な手間暇と時間を浪費すると言う事では無いでしょうか。

 

炉内の流速を減衰する為に吸気を絞れば良いとお考えの方もいらっしゃると思います。私も実測するまではそう考えていましたが吸気を絞ってダイレクトに数値が変化するのは吸気量でありドラフトの数値は大きく変化しません。何故なら管内の平均温度は吸気口を絞った直後は高温を維持しているので力強い上昇気流を維持するからです。

この現象はクリーンバーン機との比較実験で検証したので間違いは無いと考えております。

上記の現象を踏まえ、ロケットストーブ燃焼方式で有っても吸気で燃焼をコントロールする方法は理想的なコントロールでは無いと言うのが私のアプローチとなります。

 

話が散らかってしまいましたが、シングル煙突での運用は上昇気流の力が弱く、常にフルスロットルに近い運用を行わなければ理想とする燃焼状態を維持出来ない機構なってしまうと私は考えます。

だから2重煙突を導入する事で燃費が良くてコントローラブルな状態を構築する事がユーザーにとってメリットが多いと考える私の考えは大きく間違えていなかったと言う結論に至りました。

 

しかし、これは私が行った未熟な実験の結果に過ぎず、データは常にばらつく物なので本来であれば数回試行を行い双方の母平均の差で検定を行い優位水準を判定して結論を導く物ですが取り急ぎ初回の実験結果から感じた所感を述べる事を優先しました。

 

ですので、もしこの実験に興味を持たれた方は追試を行い全く異なる所感をお持ちになられましたら観測データと併せて議論を重ねる事が真理の追究に役立つかと思います。

 

 

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