全ての技術は顧客の為に
今月初旬から作り始めたお客様へ納品する薪ストーブはやっと佳境を超えて、後は細かな部品を作るフェーズに突入しました。
部品点数が多いので溶接距離も長く、完成するまでにかなりの時間を必要とするし、寸法はもちろん外観の仕上がりにも気を配りつつ
自分が納得いくまでやり直すから6月中に仕上げる事が出来ませんでした。
いくら時間がかかっても、効率を追って中途半端な物を作ることは毛頭無く、自分の心に迷いが無い納得できる製品を届けたいと思っています。
ひずみの修正
鉄板を溶接をすると必ずひずんでしまいます。
ドアなどは油圧ジャッキで軽く押してあげればすぐに平面を出すことが出来ます。
しかし、本体の対角線寸法が僅かにゆがんでいるのを発見しちゃいました。
僅か数ミリなので、目視では分からないし性能には全く関係のない場所になります。
そのまま作業を続行しても問題ないと考える事も出来るのですが、納品を楽しみにして下さっているお客様へ負い目を持って納品する事なんて絶対に出来ないのでドアと同じく油圧ジャッキで修正します。
ただ、本体重量は200kgを超えているから素手じゃ到底運べないので、ホイストで荷姿を変えながら修正します。
こんな感じで、僕の方に倒れないように吊りながら、長手方向をあて板をして6トンくらいの荷重で押して行くと箱の形が狙った寸法へ変形してくれます。
しっかり箱の寸法がでて、対角線も1ミリ以下の誤差に仕上がりました。ここまで修正するのに約半日。それでも良い仕事ができたと思っています
床の遮熱対策
薪ストーブを使っていて床が熱くなるのは非常に危険なのでKD01は3層構造で床下への攻撃を低減しています。
川原薪ストーブ本舗軽井沢支店へ納品した初号機は床下の遮熱が無く、1日中使っていると床が凄く熱くなりました。
というのも、本体下に空気が流れるパイプを設置しているから良い感じで流れる空気が本体底部を冷やしてくれる事を期待していたのですが、現実は真逆ですっごく熱くなっちゃいました。
ウチの製品はそんなもんです!などと言うことは絶対に無くて、
改善策として燃焼室の底部にもう1層空気が流れる空間を作り、さらにその下に遮熱板を設置しました。
こうすることで、冷たい空気が本体底部を通過する間に予熱された暖かい空気が燃焼室へ供給されるだけじゃ無く、本体底面を空冷してくれるので一石二鳥になります。
文章にすると簡単なんだけど、実際は手間ばかり掛かって制作者泣かせです。
けれども、出来上がった性能はすばらしいので外す事なんて出来ません。
写真で一番上に見えているのは燃焼室の下に取り付けた空気が流れるスペースです。四角い切り抜きは空気導入口。
高気密住宅対応なので、空気取り入れ口に外気導入アダプタをネジ止めします。
こんなのも溶接しちゃえば手間が減るんだけど、もしかして部品の交換が必要になったときに脱着出来ないとお客様が困るので一手間掛けて分解構造にします。
そして、遮熱板を付けると底面が完成します。
この構造を採用してから、灰がうっすら残っている状態で何時間焚いても床は素手で触れるくらいしか昇温しません。
床がすっごく熱くなるモデルは床の熱対策が大変で困ると工務店の社長さんが言っていたのですが、一見素通りしてしまいそうな当たり前な機能こそ大事だと思います。
ドアの設置
溶接の外観はもちろん、溶接をするとスパッターと言う溶接の粒が外観を悪化させるので
平面はサンダーの研磨材で除去、サンダーが入らない場所はケミカルで養生します。
写真の白いのがスパッタ付着防止剤で、溶接が終わったらぬれぞうきんで拭き取って除去します。
扉の溶接は、溶接のひずみで芯がずれてしまうことが有るし、ホンの僅かだけどヒンジ側の高さを上げてドアが軽やかに閉まるようセッティングします。
このひずむ方向を見切ってあらかじめスキマを作ったりすることが経験によって培われます。
広々オーブン室
ドアを付けて確認すると、やっと図面に書いた姿が現物になりました。
プロトタイプに比べて横方向に窓が4cm大きくなり良い感じです。
オーブンは中仕切りと底面には15インチのバットがジャストサイズで入るのでお料理に大活躍してくれること間違いなし。
オーブン室内部には調理の油煙やニオイがお部屋に流れ出さないように、小さな穴を開けているのでニオイは全て煙突から排出されます。
まとめ
こんな感じで細部に渡り最新の注意を払って製品を作り込んでいます。
製作途中に、ここはどうしようかなー?と迷うことがあればお客様が一番喜んでくれるであろう方法を選ぶ様にしています。
最近感じるようになって来たのは
僕と仲良くなる必要なんて無いけれど、この人の為に精一杯の製品を届けたいと思える人じゃないと注文を受ける事が出来ません。
真剣に作っているし、お客様の為に一番を届けたいと心の底から思わないとこんな事続ける事なんて出来ないと思うようになってました。
だから今のところ年間生産台数は10台として、契約順に予約を受け付けさせて頂いてます。