燃焼管理の為に煙突へ微差圧計を取り付けた
自然の上昇気流を利用した燃焼器具が薪ストーブです。
そして暖められた空気が軽くなり、煙突内部に負圧が発生する事で勢いよく空気をストーブ本体に吸い込みます。
2重煙突が推奨されるのは、煙突内部を高温に保ち強力な浮力を発生させることを目的としています。
煙突内部の浮力が大きければ、ダンパーを絞り吸気の流速を遅くすることで薪の燃焼速度を遅く出来る=燃費が良いと言う図式になるのです。
燃焼機器の容積パラメーターが一定であればおおよそ本体熱量と浮力を近似出来るので、浮力の測定を目視するため微差圧計を取り付けて燃焼状態のモニターをする事は製品開発に於いて必須のプロセスです。
時間と資金が無限にあり、コンセプトを総当たりして製品開発するのではなく目の前に起こった現象の因果関係を明らかにすることで、多くの薪ストーブに関する分からない現象を理解できました。
個人的見解と前置きしたうえで僕の雑感を告白すると、毎年世界中で新製品の薪ストーブが販売され企業から広告料をもらっているメディア媒体が新機能をアピールしているけれど、燃焼性能は殆ど煙突で決まります。
使い勝手や耐久性など過去の延長線上にある改善を積み重ねているだけで、根本的な構造は全く不変。
微差圧計の取り付け
経王寺のお上人様から微差圧計の設置をご要望頂きました。
工場で製品開発を行うときに燃焼の各ポイントで微差圧計を使いドラフト圧力を計測していました。
実験では煙突に穴を開けてパイプを突っ込む形態で充分機能を果たしていたけど、お客様の元へお届けする製品となればしっかりとしたクオリティが要求されるし,納品する煙突に穴を開ける事は避けたいので圧力をどこから取り出せば正しい数値が出るのか?だれも教えてくれないのでこれまた実験です。
試しに本体後ろに穴を開けて検証しましたが、負圧は検出するけれどダンパー操作に対する反応が少なかったので全くの失敗。
本来の目的からは逸脱しているので失敗になるけど、煙突で発生した負圧が本体内部にしっかりと伝わっていると確認できたのでまた一つ知見が深まりました。
この様に失敗なんて狙ったゴールにボールが入らなかっただけで、普段気づく事ができない事象に対面できる貴重なチャンスとも捉える事ができると思っています。
これを踏まえて圧力の検出は実験と同じく煙突から取り出さないとダメなんだと学びました。
とは言え、煙突に穴を開ける訳にも行かずちょっと悩んで絶好の場所を発見!
勿論発見した後には実験を行いしっかりと検証を行ったのは言うまでも有りません。
メーターの位置
微差圧計の設置は正面から視認性のよい場所をご希望されたので、油圧配管用のOSTパイプを使用してベンダー加工を行い、プラスチック製の計器が熱で壊れない様に遮熱板を兼ねた取り付けブラケットを製作しました。
工作機械の油圧配管などを幾つも製作していた経験がここで役に立ったので、無駄な経験なんて無いのだと再確認。
微差圧計の数値管理は結構秀逸で、今はダンパーを全開にして約21pa
ダンパーを全閉すれば約2pa
そして巡行運転で約10pa
圧力は全てダンパーを使い制御します。
まとめ
記事にした内容以外にも工場でテストを行いながら改善点を検出して作り直した部品もいくつかあって、納期にゆとりは有りましたが納品1週間前のタイミングで完成する事が出来ました。
設置してしまえば当たり前の形状、機能だけどそこに至るまでには結構な時間を費やしてます。
最初はどこから手を付けて良いのか分からない改造も、いくつか失敗を経る事で進むべき方向が見えてくるのは物作りだけでなく、自分の人生においても同じ事が言えるのでは無いかと思う様になりました。