煙突壁出しの実験
よくお問い合わせで、煙突の横出し距離は何メートルまで可能ですかと質問されます。
今までは本体の基本性能をしっかり完成させることを主眼に研究開発をしていたので、横出しの検証までリソースを配分することが出来なかったけれどやっと満足の行く仕上がりになったので遂に横出しの検証を行ってみた。
結論から言うと今回の実験では煙突の中心間距離1.4Mで問題なく燃焼出来たけれども、真冬に焚き付けから検証しないと逆流が起こらないと保証出来ません。
初夏の暖かい時期に実験が上手く行っても、真冬はストーブや煙突がとっても冷え込んでいるので同じ調子で焚き付けをすると煙の逆流が起こりやすいです。
このように季候によって条件が変化すると言う当たり前のことも、以前は知らなかったので春と冬では何故逆流の発生回数が違うのか本当に分かりませんでした。
今は焚き付けのバイパスを追加して、オール2重煙突仕様では逆流発生は起こっておりません。
2重煙突の準備
壁だしを実験するに当たり、T管2個と2重煙突3本が必要になります。
実験ではクレーンで組み立てたり、分解したり手荒に扱うので購入品を使うのはちょっと惜しかったのでこれも良い経験かと考えT管を自作してみた。
初めての経験だったので、思いつくまま作ってみた。
制作のポイントは、室内で使用する部材は煙突内部の耐久性重視、屋外で使用する部材は雨などの季候耐性重視という風に、同じT管でも加工方法を変えてみた。
普通では絶対に組むことが出来ない2つのT管を加工して2重化します。
実験用なので耐久性は度外視だし、初めてにしては上出来かな。
そんな感じで2重煙突をサクサクと作って行きます。
基本的には150mmのスパイラルに25mmのイソウールブランケットを巻き付けて200mmのスパイラルをかぶせるだけなので簡単です。
ダンパー付き2重煙突も作ってみました。
そして材料がそろった所で煙突を組んで行きます。
本来なら住宅の外壁などにサポートを固定した後煙突を取り付けるんですが実験なので脚立とホイストを使って実験します。
横引き距離は煙突センター距離で1.4M 縦は約4.5Mです。
テスト結果
一番心配だった焚き付けは何の問題も無く快調に点火しました。点火さえ上手くいけば心配事はほとんどありません。
あと、煙突を本体横出しに変えて排気抵抗が少なくなり効率が良くなったんでしょうか、いつもより炭の量が少なくて灰が真っ白だった。
焚き付けから順次薪を追加してもなんら不満無く燃焼します。
煙突からの煙も点火30分ほどでほとんど見えなくなるくらい薄くなってきました。
まとめ
横出しでも問題なく運用可能です。
軽井沢へ納品したときも壁だしは問題なかったので、自社での再検証と言うことでしょうか。
冒頭にも書きましたが、市販品には無い高い基本性能を発揮することを目指していたので、今まではがむしゃらに基本性能を上げることばかり追い求めていました。
特に丸形のSD01は何の戦略も無く完成したのに、びっくりするくらい高性能を発揮したから、同じ燃焼システムをインストールしたKD01も同様の性能を発揮すると勝手に思い込んでいのですが勝手な思い込みは見事に打ち砕かれて全然納得のいかない製品に仕上がり、根本的な原因を見つけるまで約1年費やしました。
今になって振り返ると、単に成功するんじゃ無く、上手く行かない理由を探し改善する中で今まで気づくことが出来なかった薪ストーブシステムの大事なポイントを知ることが出来たので、一見回り道のように見えるけれど長い目で見れば正解の道を歩んだのかも知れません。
KD01の2号機が完成形だと都合良く思い込んでいましたが、たぶんお客様へ納品する3号機は更に改善して今以上に良い製品に仕上げて行きます。
2号機から3号機へ構想中のアップグレードポイントは
- オーブンの大きさを20mm小さくする代わりにドアを大きくして、庫内を2段に仕切って使えるようにする。
- 排気抵抗が下がってよく燃えるように排気流路の拡大。
1は薪を投入するドアも拡大するので使い勝手が良くなると思うし、2は燃焼効率の向上にすごく効果的なので仕上がりが楽しみです。
今はオーブンなしのKD02を作っているで、3号機の製作は早くても6月くらいになるでしょうか。