ヒミエルストーブ

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機能とデザインを考える

 
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薪ストーブに限らず作業を繰り返すと、いつの間にか慣れたパターンを無意識に選択するようになります。

半ばオートメーション化された作り方の癖みたいな物で、いつもと違う形を作ろうと思ってもどこか同じようなテイストになるのは、作り方の癖や慣れた工法に意識することなく縛られてしまうのです。

プロデザイナーからのアドバイス

私のように一人ですべて完結して薪ストーブを作っていると、大手メーカーのように多くのモデルを作る事は難しいです。

イベントや工場へ見学に来てくれた人たちから「もっと小さいやつが有ったらいいんじゃない。」とか「見慣れた形を作ってみたら。」など有り難いアドバイスを貰うのですが、全くゼロの状態から新作を作り出すのは果てしない労力と時間を必要とするので、アドバイスを聞いて即行動と言う気分にはなれません。

何に時間を使うかと言うと設計とデザインです。

燃焼機構や機能に関しては工学的アプローチで解決できるのですが、私にとって見え方を整えるテクニックは皆無に等しいのでプロデザイナーの友人のアドバイスを参考に加工容易性を考えて現実的な形に落とし込んでゆきます。

今作っている丸型のロケットストーブは東吉野村office campのD坂本氏にデザインを監修してもらいました。

そして、今回つくるロケットストーブはまたもや東吉野村在住のデザインオフィスA4の菅野氏にアドバイスを頂きました。

実寸模型

去年作ったロケットストーブは丸型と言うことも有り、メモ用紙に書いてもらったデザインを参考に、実寸の図面を書きながら出来上がりを想像して作り上げました。

けれど、実物の持つ質感や圧迫感なんかは作ってからじゃないと分からないので、ある意味一発勝負的な側面は否めません。

丸型のロケットストーブもいいのですが、本体がデカく標準的な住宅にはちょっと大きいので、別モデルとして小型を作ってみようと思い立ったのが6月初旬です。

最初は紙に鉛筆書きで簡単な形を書き、大体形が決まったところでCADで清書します。 

作った経験のある形だと、ここは深い方がいいとか、ここの板厚は薄くても構わないなど押さえるべきポイントみたいなものが有るので、前回の経験を参考に改善すべきポイントを攻めれば良いので時間はさほど必要ありません。

しかし新作は勘所のストックがゼロなので先週は最高だ!と思い込んでいた設計を今週見直してみると、やっぱりこっちの方がいい!という事が当たり前のように有るので、都度図面の訂正をするから時間ばかり浪費してしまいます。

今回は一般的な角型のデザインを採用したので、初めてコンパネで実寸型模型を作ってみました。

最初は大きさを決めるのですが、横幅を3パターン変えた模型を作って実物の大きさを確かめ、そして遠くから眺めたり、薪を投入したりして外寸を決めれば、内部の燃焼機構を外寸に合わせて設計してゆきます。

今回は内部までコンパネで模型を作ったのでいつもより簡単に完成形をイメージすることが出来ました。

そして、今まで慣れ親しんだ加工方法を採用しているので、すべて四角のカクカクした薪ストーブの模型が出来上がりました。

模型が出来上がった後、CADで部品の詳細を煮詰め部品図まで仕上げた後にふと

「デザインの事で相談があるなら言ってくださいね~」と菅野氏の優しい言葉を思い出したので、図面と模型の写真を送ってアドバイスを依頼しました。

愛の熱血指導

メッセンジャーで資料を送信してしばらくすると送信したデザインを元に、鉛筆書きで見え方大事な部分を端的に教えてくれる返信が帰ってきました。

この端的に教えてくれるってところが菅野さんのすごいところで、訳の分からない理論やこだわりなんか一切なく核心をズバリと優しく教えてくれました。

初稿の指摘事項は・・・扉の角を丸くできないですか?でした。

理由は全て「角」の要素で構成すると見た目が重くなり、適度に丸が入ると視覚の「ガス抜き」になるそうです。

むむむ。

言われてみれば確かにその通りだけど、アドバイスを実行しようと思えば、扉と本体の間口設計を最初からやり直す事になるし、今まで慣れた工法で作る事は不可能なので別の方法を実験を行いながら探って行くのでちょっとハードルが高いアドバイスなんです。

 

すごく核心をついたアドバイスだけど、実行するには従来の実績有る方法を棄てて、未知の工法を探りながら試して行かなければならない。

ふー また時間を使ってしまうじゃ無いの。そんな風に考える事も出来るのですが、せっかくの新作なので今までとは違う事に挑戦するチャンスでもあるとポジティブに考え色々アイデアを出し、実験を行ってドアの角を丸くする方法を考え出しました。

 

この色々試して考える行為自体がスゴク面白い!

そして、ドア形状変更に伴い、2週間かけて全体の設計をやり直し、もう一度模型を作り、加工図面まで仕上げた段階でもう一度プロにチェックしてもらいました。

2度目のアドバイス

最初に比べて「良いですね!」との意見を貰い、脚の形状や全体のバランス、リズムの付け方などを追加でアドバイスしてくれたので、またもや図面を書き直しました。

今回は過去最高に図面を書き直しをしています。

けれど、紙に書いている設計段階で構造が決まるから実際に手を動かしている時よりも大切な工程だからおろそかにはできません。

設計で物を作りこむってのは物つくりの定石なので、これも新作品を生み出す楽しみの1つでしょうか。

まとめ

今回は全体の大きさもコンパクトにする関係上、従来の構造をすべて踏襲することが出来ませんでした。

だから絶対に壊れない場所と、あえて交換可能にすることでスペースを作ったりするなど、スペースの制約がある中たくさんのアイデアが浮かんできました。

自分一人だけの設計だと工数の掛からない、見栄えも独善的な形になっていたと思います。

なので、アドバイスを真摯に聞いた後、自分なりの文脈に落とし込んだ物つくりが大事なんじゃないでしょうか。

今回も完成すれば丸型と性能の比較実験が楽しみです。

 

 

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