ヒミエルストーブ

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口元から2重煙突が高性能なのか統計を使い検証してみた

 
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ヒミエルのサイクロンストーブはシングル煙突でも十分でしょうか?とお問い合わせを頂くことがあります。

昔の僕は2重煙突の重要性が分かっていなかったので何とかシングル煙突で運用出来ないかと考えていたし、ずっとシングル煙突で実験していたのでそれでも十分かと思っていました。

 

昔の記事と主張が変わってしまってごめんなさい。 

 

今の僕は、薪ストーブという物は煙突を含めたトータルシステムだと知ってしまったので2重煙突がお客様にとって一番メリットが大きいと考えます。

勿論、デメリットとして初期費用が掛かりますが長い年月使う事によりランニングコストで回収できると考えます。

 

僕が求めるのは、廃材でも竹でも何でも燃やす事が出来て、薪がゆっくり燃える薪ストーブです。

シングル煙突との比較

炎の流れなんか見ても煙突による性能の違いなんて絶対に分からないので、データロガーを使い1日を費やして温度データを記録します。ストーブは同じSD01を使い煙突をシングルと口元から2重煙突でデータを取ってグラフにしたあと統計的に効果があるのか検証します

まずは、一番高温になるヒートライザーに被覆付き熱電対をセットして、後はダンパーと、煙突の一番高い所で排気温度を測定します。

 

後は普通に薪を投入し日中普通に連続燃焼して温度を測定して行きます。測定する日によりサンプリング時間が異なるので温度が高い頃に揃えてデータを切り取りグラフにします

青線がシングル煙突、赤と緑が2重煙突の燃焼温度の推移です。

こんなグラフを見ても何の意味があるのか僕にもさっぱり分からないから、統計的に処理して2重煙突のデータとシングル煙突のデータに違いがあるのか検証して行きます。

 

ゆっくり燃焼する秘訣

そしてここがとても重要な核心部分なので、強調させてもらうと、高温を発生させる事がなぜ長時間燃焼に繋がるのか?

私が着目したのは空気の流れを遅くする事が大切だと言う事です。

 

その為に高温を発生させる事で強力な浮力を発生させ、出口で空気のフローコントロールをします。 出口絞りの状態を作り出すには強力なエネルギーを本体内部に溜めなければ作り出す事が出来ません。

 

通常の薪ストーブの様に空気を絞ることによる火力調節では、薪の量が変化する事で温度が急に変化して行くので高温を長時間作り出す事が難しいし、煙突から猛烈に廃熱しているから燃焼室内部が比較的短時間で温度低下してしまう。

要は入り口絞りで空気の流れをコントロールしている状態です。

 

そして、フローが遅くなるとなぜ燃焼速度が遅くなるのか?理由はこちらの記事を参考にしました。

4-1.燃焼速度(Burning velocity)

 

   燃焼速度を支配するのは可燃分子と酸素分子との接触の良否である。固体燃料では空気と接触するのは表面であるから、接触面積の大小が燃焼速度と密接な関係にあり、燃焼物が細かい程接触面積が大きくなり、燃焼速度が早くなる。表面分子の燃焼によって生じた燃焼ガスが、燃焼物の外面を包む為、内部の可燃物が酸素に接することが出来ないから、燃焼が継続しない。このガス層を通風作用によりとり除けば、燃焼速度が増加する。

出典)焼却炉技術コンサルタント<<滋賀技研>>計算書のプロ 

URL:http://shigagiken.com/free/55

このガス層を通風作用により取り除けば、燃焼速度が増加する。との記述より、逆に通風速度を遅くすれば燃焼速度が遅くなると考えた訳です。

 

僕の目的はゆっくり薪が燃えて行く薪ストーブなので。

通風を遅くするには「出口絞り制御」

それを可能にするには「高温の発生」が必要

そして高温発生には「2重煙突が必要」になるのです。

 

そして2重煙突を接続すればシングルと比較して高温になるのか?

グラフなんて見たって感覚でしか分からないので、こういう時は対応のあるt検定で母平均の差を検定します。

シングルのデータをAとして、2重煙突のデータを1,2と準備しました。

そして検定1がAと1の検定、検定2がAと2の検定、そして検定3が1と2の検定として、帰無仮説が2標本の差が無い、対立仮説を2標本の差が有ると設定し対応のあるt検定で検定しました。

結果のスクショがこちら

シングル煙突との比較は有意水準5%両側検定でP値が-7乗、-16乗よりも小さい値となったので対立仮説を採択します。

そして検定3はp値が0.3となり帰無仮説を採択しました。

簡単に説明すると

シングルと2重煙突のデータには明らかに温度の差があって、2重煙突を使うと5%の有意水準で高温を生み出している。

2重煙突は高温の発生に効果が有ると思われる。と言う事です。

そして2重煙突同士の検定は、母平均に有意差が無いすなわちデータの母平均が近いと言う事です。

 

そんなの当たり前じゃない!なんですが当たり前をしっかりと検証したデータを見たことが無いので実験する事に意義が有ると考えます。

まとめ

ゆっくり燃える薪ストーブを求めるのなら高温な燃焼温度を発生させる2重煙突がマストアイテムだと言う事が今回の測定データで裏付けられました。

ゆっくり燃える定義は出来ないけど、2重煙突が高温発生に効果があると分かっただけで今回は御の字です。

 

因みにシングル煙突の平均温度が570℃ 2重煙突の平均温度は660℃です。

 

この様に、改造した後は効果があるのか実証実験を行い統計的に正しいのか判断するのがヒミエルストーブの手法です。 芸術的な感性を物作りに活かす事は凄く大切だけど、製品開発は感覚に依拠するものだけじゃなくてしっかりエビデンスを検証する事がより良い開発に繋がると強く信じています。

 

 

 

 

 

 

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  2. […] 薪ストーブの煙突について、よく言われていることの一つに「口元付近の1メートルくらいはシングル煙突でも良い」ってことがあるが、これはどういう根拠なのだろうか?「このくらいなら煤の付着も大差ない」「シングル煙突から放熱するから暖房に使える」というのが一般的な理由付けだと思う。 私はこれまでの経験から、メンテの際にシングル煙突部分にだけ極端に煤がついているケースを多く見てきたし、薪ストーブ本体からの熱だけで暖房は十分と考えているので、排気温度が冷えるデメリットの方が大きいと判断して、基本的に口元付近から二重断熱煙突を標準施工してきた。これはあくまで私の経験則と勘であって、数値で比較した根拠があるわけではなかった。 最近、ヒミエルストーブで口元付近の1メートルのシングル部分と断熱化した前後で比較したら劇的に燃え方が全然違うというという体験をした。焚きつけ時に煙の逆流が起きにくくなるし、空気を絞れるようになって燃費(薪の持ち)が明らかに向上した。排気温度が高いまま維持されるので、煙突から排煙が上っていく力が強くなるから、理屈から言えば当然のことなのだけど、これまでは具体的に測定値を数値で示すことができなかった。 【口元付近のシングル煙突の断熱実験】 天板より上部分はセラミックスーパーウールが見えるとなんだかなのでアルミフレキでカバーして耐熱塗料で処理 天板の下の背面部分は、正面からは見えないので、セラミックスーパーウールを巻いた状態 設置直後の室内側シングル煙突状態 今回、ヒミエルストーブの開発者の西岡さんが、北軽井沢店の開店準備中に持ってきてくれた後に、工場に帰ってから煙突の断熱の有無の違いによる、【炉内の燃焼温度】を複数回測定して、平均値をレポートしてくれた。 https://himielstove.com/2019-03-22-deta-anarytecs […]

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