火力調節の核心部品ダンパーを考察する
現在販売しているロケットマスヒーターを内蔵したヒミエルストーブには、基本的に空気の調整機構は付いていません。
空気の調整機構が付いていると薪を長持ちさせようと思い、どうしても空気を絞ってしまう気持ちは痛いほどよく分かりますが空気を絞った運用は煙が多く発生したり、ガラスが曇ったりと良いことが一つもありません。
ですので、今は不要だと考える空気調整機構を撤去して、緊急時の空気遮断弁だけを備えた設計に落ち着きました。
ダンパーの重要性
吸気の調整機構をキャンセルした代わりに、火力調節の役割を担うのがダンパーになります。
世間一般に販売している薪ストーブはほぼ100%空気の量を調整して燃焼速度を遅くしています。
簡略に言えば入り口で燃焼をコントロールしています。
対するヒミエルは出口ダンパー1カ所で火力調節を行います。
そこで重要になってくるのがダンパーの形状と隙間の面積。
最初の実験では重要な事なんか一つも分からないので、市販の2重煙突を加工して適当にダンパーを作ってみた。
もちろん材質はステンレスを使用して、耐食性にも配慮は抜かりません。
そして実験の結果は、最悪に調子悪かったです。どのように調子悪かったかと言えば、ダンパーで火力調節が出来ませんでした。
理由は簡単に推測できて、ベルヌーイの定理よ気圧が下がり流速が上がったのです。
穴の面積が大きく、ダンパーで浮力を閉じ込める力よりも穴を通り抜ける力の方が勝っていたので、ダンパーを閉じても火が全く小さくならず逆にものすごい高速で炎がヒートライザーに吸い込まれて行きました。
この実験結果より、内部の浮力が通常型薪ストーブと比較して大きいヒミエルストーブの火力調節を行う場合はダンパーの面積がとても重要になると分かりました。
ではどのくらいの大きさが最適なのか?
煙突内部ぎりぎりの大きさで弁を作れば良いのかと言うと、それじゃダンパーを締め切ると火が消えてしまうのでよろしくありません。
ボルグシステムで比較する
答えのヒントは意外なところに有り、既存のストーブと入れ替え希望のお客様より支給されたボルグシステムのダンパーを参考にしました。
ボルグ煙突の弁は円の一部が切り欠いて、ダンパーを締め切っても排気が抜けるような設計になっています。
過去の経験上、こんなに大きな隙間があると火力調節が出来ないばかりか流速が上がって良く燃えないのでステンレスで隙間を塞ぎました。
そして燃焼実験。 結果は・・・ものすごく良い感じにコントロール出来ました。
ボルグの排気弁の直径が今の所一番良い感じでコントロール出来るので、自社加工でダンパーを作る場合はレーザーカットしたステンレスを使いボルグと同一のダンパーにします。
高木製のダンパー
国産の高級品、高木製のダンパーは僕の基準ではちょっと弁の面積が小さいと感じます。
連日の猛暑で巡航運転の実験を行っていないので、実験の後改造するかどうか判断します。改造部品はもう作っているので、後は溶接するだけ。
まとめ
ダンパー1つでも、最初は最適な形状が分からないので実験と考察を繰り返しています。
何度も言いますが、参考になる先行事例が一切無いので雪山をラッセルして進むが如く、地道な実験と検証を繰り返して最適な形を決めています。
そんなときに参考になったのが、いろいろなメーカーの製品を比較して使ってみることでした。
自分の発想に無い作り込みを見る度に、新たな発想に繋がるのでいつまでも勉強ですね。