ヒミエルストーブ

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KD01製作 その3 エアー回路を作る

 
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6月は薪ストーブのお仕事以外にエンジニアリング関連の仕事が立て込んでいるので、ストーブ製作に割り当てる時間に限りがあります。

時間は限られていますが、さすがに10台以上作って来た経験のお陰で細かな部品の手直しや寸法調整が減ったのでストレスなく作業できるのが嬉しいです。

 

今回は燃焼構造の重要部分、空気の流れる部分を作りました。

空気予熱システム

SD01はお部屋の空気を直接燃焼室へ導入しますが、KD01は本体底面から入った空気がエア回路を通過する事で予熱されて燃焼室へ導かれます。

水色のラインがエア回路で、本体底面から正面ドアに向かい空気が供給される構造になっています。

冷たい空気が直接燃焼室へ入らず予熱さえたエアーが供給されるし、ガラスに向かって空気が絶えず吹き付けられるから驚くほど窓の曇りが少ないです。

 

吸気した空気は最終的に燃焼室のガラスに空気が吹き付けられる構造になっています。

ブルーの矢印が空気吹き出し口です。

この形状や空気経路も何気なく作っている訳じゃなくて、空気が不足しない流量を確保する為数パターン試作の後決定しました。

 

この構造がベストでは無いけど、外気導入を備え、空気を予熱し、上下左右の吸気不均等が無い状態を作ろうと思ったらこの形に行きつきました。

 

エア経路設置は、スペースの制約や製作工数も増えるけど欲しい性能を発揮するには必須の構造だと確信します。

 

得られるメリット

この構造は製作者の自己満足だけじゃなくて、ユーザーが普段使って行く中でも大きなメリットがあると考えてます。

それは、面倒なエア調整が不要になると言う事です。

機種によりますが、1次と2次燃焼空気を操作する為に2本のレバーを備えて、本体の燃焼具合を確認しつつ絶妙に操作するのも楽しいですが慣れないうちは良く分からないし、操作に慣れたとしても薪を追加するたびに調整するのは面倒に感じました。

 

ヒミエルストーブそんな手順は全く不要で、火力だけ調節すればエアー調整は不要なのでイージーコントロールが可能になります。

また、エアーをガラス面に絶え間なく吹き付ける事により、クリアーな視界を維持出来ます。

 

世の中のクリーンバーン機は、エアを絞って燃焼速度を遅くしますが

エアを絞る→ガラスが曇るので窓掃除の頻度が高くなります。

 

勿論ヒミエルも窓は曇るけど、クリーンバーンと比較すればその差は断然違います。

 

 

 

単に鉄の箱を作って、ガラスにはエアカーテン無、空気導入はシャッターだけの薪ストーブを安価に大量生産する考え方もありますが、その様なストーブは多分に漏れず、燃費が悪くて薪の準備に多くの労力とお金を必要とするから僕の求める物じゃ有りません。

 

コストカットの弊害

ウチの制作手法と真逆の、安さを重視するために製造の手間を省いてガラス面の曇りを避ける一番簡単な方法は、ガラス取り付けパッキンの上面か下面に隙間を作りガラスとガスケットロープの隙間から空気を導入する方法が一般的に取り入れられています。

僕もごく初期の頃はガラス面の曇り防止のため、この手法を使っていましたが現在は採用しておりません。

何故なら、燃焼室へ供給される空気遮断をコントロールできないのが危険と考えるからです。

炎が大きくなりすぎちょっと怖くなったので、炎を小さくしたいと空気操作レバーを閉じたとしても、ガラス取り付け面に隙間があれば空気を遮断することなど不可能で俗に言う熱暴走状態に陥ります。

 

炎が大きくなるのに、鎮火出来ない恐怖は想像するだけで嫌になります。

だから、いかなる場合でも窒息できる気密性を確保することが大切だと考えるので、ガラス面に隙間を作るアプローチは採用しません。

 

また、第三種換気等を導入している密住の高い宅に於いては、お部屋の圧力が負圧になるので熾火状態になればガスケットの隙間より煙が室内へ逆流します。

 

とにかく、しっかりと燃焼室の気密を保たないと窒息状態を作り出し消火できないばかりか、お部屋が煙だらけになる危険性が有る事を覚えておいて下さい。

 

じゃKD01はどうなのよ?と思われるのは当然で空気遮断鎮火テストの動画はこちらになります。

沢山薪を投入し、最大火力付近で燃焼していますがしっかりと鎮火する事が分かるかと思います。

 

まとめ

新築の住宅設置に関しては、燃焼効率だけでなく気密の確保や外気導入など過去の薪ストーブでは求められてこなかった新たな知見が求められます。

 

ストーブや煙突はそれこそお金を払えばどこでも売っているので、誰でも入手可能です。

 

では僕の価値は何かと自問すれば、過去の経験から蓄積された「ソフト」の部分が大きなウエートを占めると思っています。

経験に基づくアイデアや工法の提案は、お客様の視点からは全く原価の無い、¥0商品と思われがちですがそれは大きな勘違いで一番価値の高い商品だと思っています。

 

薪ストーブって使っていくうちに「もう少しこうなれば良いな~」と思う事が結構あります。

メーカーから製品を仕入れて設置する販売店は取次がお仕事なので、このちょっとした要望に応える事が出来ません。

 

僕はミニマムな薪ストーブメーカーだからこそ、小回りを効かせてお客様の要望を叶え、しっかりとした施工を提供できることを目指しています。

 

 

 

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