長時間暖房への考え方
僕のブログ運営は期間だけは長くて5年以上更新を継続しています。そしてコアな薪ストーブユーザーから寄せられる相談の一つに、朝まで燃焼が継続できないかというものがあります。
最初に僕の結論
燃焼をゆっくりして朝まで継続するのは難しいので、
長時間の放熱を望むのならば蓄熱型ストーブを選択する事が課題解決の近道だと思います。
理由
生真面目な私は朝までの長時間燃焼の要望に答えようと思い、KD 01のオーブンを取り外し全て燃焼室にしたモデルを作って実験してみました。
一見でかい燃焼室にたくさん薪を詰め込めば朝まで緩やかに燃えるかと思いますが、
実際は炎がゆっくり燃えるより先に薪全体に炎が燃え広がってしまうので望むような長時間燃焼を作り出すことは不可能でした。
この様に玉切りの乾燥薪を目一杯詰め込み、ダンパーを開いた状態で運転すると4時間くらいは燃焼を継続できたけどやっぱ8時間の連続燃焼は不可能でした。
他のモデルはどうなってるのか分かりませんが、一見するとゆっくり燃えているように見えますが数時間後には何度実験をしても、炎が薪全体を覆ってしまいロケットストーブ特有の端から緩やかに燃えていくという現象を作り出すことはできませんでした。
薪が燃え尽きたように見える燃焼室の底には灰に埋もれた日々がたくさん残っていますが、冷えたお部屋を暖房するだけの輻射熱を発することはありません。
この実験から得られる考察は長時間の燃焼を狙って薪ストーブの構造を複雑にするよりも、
本体の周りをレンガなどで覆い蓄熱させることによって長時間緩やかに放熱する方が朝まで暖房のさせる機能を簡単に満たせるのではないかと思いました。
ひょっとすれば僕が知らないだけで長時間緩やかに燃やす技術があるのかもしれないけれど、全く未知の課題を解決するために多くの時間と労力を投資するよりも、簡素で既存の知識を活用できる方法を選択する方がメリットが多いと考えます。
そういったわけで僕は朝まで暖かさを維持できる薪ストーブが欲しいのであれば、
蓄熱型で対応することが良いかという結論に達しています。
あくまでこれも仮定の一つなので絶対の答えというわけではないですが、今後は積極的に大きな燃焼室のモデルを作ることはしません。
大きな扉の問題点
大きな燃焼室の薪ストーブを作って気づいた大きな問題は、扉から煙がお部屋へ逆流するということです。この問題は世間で市販されている海外のモデルにもあるし韓国でみたロケットマスヒーターでも起こっている問題です。
そして解決方法はシンプルな物が多く、
薪追加専用に小さな扉を設けて焚きつけ以外は横にある小さな扉から薪を追加するというものが多いです。
そもそも長時間燃焼してほしいという理由は、炎を長時間見たいというわけではなく長時間の暖房が必要なわけで、燃焼速度を遅くするよりも蓄熱体から緩やかに放熱する方が技術的な難易度が格段に低いです。
まとめ
今は注文品の生産に忙しく新たな実験をする時間はないですが、
一番最初に作った試作品を切り刻んで周りをレンガで囲い 新型の蓄熱型ストーブを来シーズンの終わりまでにはシェイクダウンしたいと思っています。
ストーブ全体をレンガで作らなくても、燃焼機構は慣れ親しんだサイクロンチューブ構造を採用して燃焼ガスを一気に過熱し、天板までは鋼板で作って、本体の周囲をレンガにすればゆっくり燃焼する特性に追加して蓄熱という、今までにないメリットが生まれるんじゃないかな。
こうやって商売は2の次で、自分が興味のある、テンションの上がる妄想をしている時がとっても楽しいんです。
ヒミエルストーブの製造工程は結構詳しくブロブにアップしているから、興味のある人はどうぞ真似してください。
そしたらしっかりと狙った寸法に仕上げ、無煙状態を生み出すには思った以上に手間が掛ることが理解できると思います。
過去にチャレンジした投資が現在実を結びお客様にご注文頂いているけど、完成したものを量販する事よりも、僕は研究開発志向なので失敗も含めた新たな挑戦こそが製造メーカーの醍醐味だと思ってます。