高熱による本体のひび割れ発生について
ヒミエルストーブは本格的にローンチしてから早くも3年が経とうとしています。
徐々に認知されてきましたが、未だ使い込みながら製品の納まりを確認する部分も多く特に初期ロットのお客様からシーズンオフに届く使用レポートは開発者としては非常に有難い情報となっております。
そして今回はヒミエルストーブの一番ネックとなっていた高温のヒートライザーと本体とのヒビ割れについてご報告したいと思います。
弊社の対応として、不具合等は通知があった人だけ対応して後は粛々と別バージョンを販売する事で素知らぬふりをすることは無く、私が重大なインシデントと考える事柄は広く公開し、御納得頂けた人にだけご用命頂ければよいと考えております。
また、初期ロットのお客様へは弊社の考え方、そこに至った経緯、対応部品の無償対応で末永く使用して頂けるように対応させて頂いております。
熱膨張率の違いによるひび割れ発生
ヒミエルストーブはロケットストーブ構造を採用しているので、ヒートライザーと言う最も熱くなる部分は熱による摩耗を防ぐためにステンレスで作成しています。そして燃焼室本体は鉄板を使用しているので温度が高い部分程,素材の膨張率の違いにより溶接部分に負荷が掛かります。
写真は最初に作ったSD01の燃焼室で、使い初めて1年くらい経った頃に割れの発生を認識していました。そして自社ではこの状態での使用を継続する事で何らかの不具合が発生するのか経過観察していました。
不具合の発生を認識していたので、製品への対策を放置する事は無く該当部分を覆う様な遮熱板を作って納品していました。
初期の遮熱板はこのような形状をしているのですが、遮るべき一番熱くなる部分が丸見え状態になっていました。
当時の知見で真剣に作っていたのですが、経年変化を知ってこそ得る知識が有りますので今の状態を最初から作り出す事は不可能でした。
現在はワレが発生した部分を覆う様な形状になっています。
遮熱板の形状を進化させることで割れに対応したと言う事です。
更なる進化系
そして、お客様から頂いたレポートを踏まえ次に作る製品は溶接すら行わない事を決めました。
そもそも熱による膨張が異なる異材を溶接する事により割れが発生するので、最初から溶接をせずにZ字型のカシメで躯体を支えフローティング構造で熱によるヒズミを逃がします。
このコンセプトは自社で割れを認識していた頃からアイデアの一つとして持っていたのですが、遮熱板の改造で課題を解決できたと思い実行を保留していました。
そして、溶接が割れてしまったお客様のストーブは、出荷時の形状とは異なって誠に申し訳ございませんが割れた状態でお使い頂いても、今後の出荷製品と同等の構造となりますので安心して継続しようして頂ければと思います。
割れた状態で使えるのか?ご心配になられるかも知れませんが自社のサンプルを見る限り全く不都合はございません。
そして、割れた部分を覆う形状の遮熱板をお使い頂く事により今までと同等の耐久性を提供できると考えます。
まとめ
ロケットストーブ構造は燃焼温度が高いので、経年劣化を読み切れない部分が多数あります。
設計段階で思いつく限りの対策を行うのですが、結果が判明するのが2~3年後となりますので発生した不具合に都度対応して行くのが実情になります。
実際の製品寿命は未だ不明ながら、不具合の発生と対応を誠実に発信する事でお客様が感じる不安感を少しでも軽く出来れば良いと思うし自社のメリットばかり宣伝して後から落胆するより、最初から不具合も含めて全てお話する方が大切だと考えるので今後も積極的に発信して行きます。
世間は成功事例の話ばかりが溢れ、このような失敗事例を公開している情報が少ないと僕は感じています。
ハッキリ言って結果の見えている成功事例なんかよりも、目論見が外れた失敗にこそ成功につながる貴重な情報が詰まっているのでもっと胸を張って情報発信すれば良いと考えます。
ヒミエルストーブはそれこそ忘れるくらいの失敗を改善して現在に至るので、これも更なる品質向上の良いきっかけとしてお客様へお届けして行きたいと思います。