燃焼室に炭が大量に残る理由を発見
長かったツアーの最終目的は兵庫県豊岡市です。
今までの行動を振り返ると
熊本県南阿蘇では本体設置
島根県雲南市では現地調査
兵庫県豊岡市では不具合対応
訪問場所により全てタスクが変わるし熊本を起点に丁度一筆書きのルートなので効率よく回ることが出来ました。
そして今回のお題は「燃焼室に炭が大量に残る問題」の解決です。
大量の炭と灰が発生
以前記事に上げた燃焼室に大量の炭が残る問題は、根本的な原因を探す事が出来ないまま時間だけが過ぎ去っていました。
メールで燃焼モードを変えて実験してもらう様にお願いしても、何か根本的な部分で前提条件の齟齬が発生している様なので埒が明かないと判断し、実際に現地を見て確認しようと決意しました。
ただし、事前に送信いただいた写真には明らかに通常と異なる状態だったので何故その様な結果になるのか非常に興味がある反面、頭の中で原因を推測するけど無数にある理由を考えても答えに行きつかず漠然とした不安感を持っていたのは事実です。
これが事前に送信いただいた燃焼室内部。
明らかに灰が多くて、正面空気吹き出し口まで灰が埋まるって僕が推奨する運転では絶対に発生しない状況だし、自分では未経験の状況なので判断が付きませんでした。
現地でヒアリングしたところによると、燃焼室を掃除した後半日でこの状態になるそうです。福井県のユーザー様は灰を廃棄するのは1週間から2週間の間位と教えて下さったのと比較して明らかに異常な量なのは間違いない。
ヒートライザー上部の写真だけど、上に乗せている保護板が物凄く劣化しているのと、僅か数か月で1シーズン使用したのと同じくらいの灰が堆積している。
明らかに焚きすぎで物凄い高温になって加速度的に熱劣化が進んでいる。
いつも見慣れている状況と全てが違う写真に、何かおかしいと感じるけどお客様はその状況に違和感を認識していらっしゃらないので、写真じゃ理由を断定できない。
現地で理由を発見
前もって前日焚き終えた状態のまま僕の到着を待って頂くようにお願いしていました。
実際に現場を確認すると燃焼室には大量に灰が堆積して、その中に未燃焼の炭が埋まっていました。
これって、炭が燃え残っているんじゃなくて単に灰の量が多いだけじゃ?
その証拠に灰を除去した後の炭は赤く燃え上がり普通に燃焼を継続します。火鉢の運用と同じで、灰の中に炭が埋まってるだけでした。本当に不良品であれば残った炭は燃えずに火が消えています。
ではこの状態が装置の不良だと言うのでしょうか?
答えはNOで単に薪を大量に供給しすぎた結果に過ぎません。
この現場では炭が燃焼室に残る不具合の原因は「薪の入れすぎ」だったのです。
炭が燃え切る前に薪を投入→炭の上に灰が積もる→炭が窒息のサイクルが回っていました。
僕が実験でしか行わないブーストモードで運用
通常の納品説明では僕が考える最も効率の良い運転方法をレクチャーしているのですが、実はお伝えしていない危険なブーストモードが存在します。
それは薪を沢山投入して、天板が真っ赤になるまで昇温させるモードです。
燃焼室に薪を大量投入して薪を火だるまにすれば、信じ慣れない位の高温が発生します。過去に測定した時は1000度付近まで昇温しました。
本当にびっくりするくらい熱くなるけど、暖房には不必要な高温度帯だし、いかに高温対策を施したヒミエルストーブと言えども熱による摩耗が加速度的に進むのでこの運用は間違っているとお伝えさせて頂いてます。
燃料を入れすぎた結果、天板の丸い部分が真っ赤になった事が3度ほどあり、その時は外が寒くても室温が40度を超えて恐ろしいほどの熱気が放出されたそうです。
この運転方法を連続すれば本体が近い将来故障する可能性が大きくなるし、対応しようと思えばインコネルやSUS310などの耐熱素材を使用すれば良いけど素材価格が通常使用している物の5~8倍程するので採用は現実的では無いと考えます。
お客様はオーブンの温度計を200度に維持するためには大量の薪を投入しなければならなかったとお話下さいましたが、僕の説明では温度計をレンガに直接置いていたのに、五徳の上に温度計を載せてレンガから浮かせた状態で置いていたので、温度検出条件が説明と異なり計器が低めに温度が表示されていました。
だから、薪を大量投入して超高温状態で連続運転されたとの事です。
とにかく、薪を沢山詰め込み僕自身が運用したことのないオーバーヒーティングでの連続運用では薪の消費も早いし、灰の中に大量の炭が残るし、本体が加速度的に劣化するので不満を感じるのも無理がありません。
よくある事例
これはお客様が悪いのではなく、ちゃんと運用方法をお伝え出来ていなかった僕自身の過失でもあるので今後この様な事がおきない様に対策を施したいと思いました。
薪ストーブあるあるなのですが、全くの初心者の方は機種に応じた説明を前提条件なしに受け入れて運用する事が出来るけど、何十年も使い込んだ本体を入れ替えたらストーブの機種は変わっているのに個人的経験に基づいた運用を変える事が出来ずにストーブがおかしいと感じてしまう事が多々あります。
車だって自転車だって車種に応じて運転の方法が変わって来るように、薪ストーブだって機種が変われば操作方法を変える必要が有るのに、過去の慣性が強いほど機種変更への対応が難しくなって、新しい機械が悪いと認知が歪んでしまう傾向がある。
その様な状態のままメールで議論しても、元となる前提条件がかみ合っていないので、いつまでたってもぼんやりとした話に時間をついやしてしまうので、根本的に解決したいと思えばいくら遠隔地でも実際に現場を確認しなきゃ駄目だと今回学びました。
まとめ
今回の記事は決してお客様を非難する為に書いたものでは無いと断言させて頂きます。
いつ露見するのが未知数だけど、将来のとある日にもっと遠隔地のお客様に発生しても全く不思議の無い不具合事例でした。
そんな中気前よく事例を記事にする事を許可して下さり、また僕に新たな気づきを与えるきっかけを頂けたことに感謝です。
では僕に何が足らなかったかと考えれば「正しいと考える操作方法の周知」だと考えます。
勿論使用環境によってアレンジを加えるのは普通だしどんどんやって頂く事は大切なんだけど、まず基本の型を押さえた上で操作して頂く事が不具合など発生した場合の基準となる考え方になると思うし、僕とイメージを共有しやすいので、今後は操作方法の動画を撮影してyoutubeにアップしようと思いました。
お客様にお立会い頂き僕が最適と考える運用法を実演したところ、お客様は火が今にも消えそうに見えるとのご感想でした。 この率直なご意見こそが認知のズレ、過去の慣性そのものでは無いでしょうか。
また口頭やメールで不具合の発生を聞いても状況が分からないので、タイムプラスや動画を撮影してデータの保存先を連絡頂き、現象の共有を図りながら課題解決を実施出来ればと思いました。
そしてブログでも正しい燃焼方法の記事をアップして質問のある方にシェア出来る体制を構築しようと思います。
メールであれこれ粘らずに、速やかに現地に赴いて問題の原因を特定出来て本当に良かったです。
この様にヒミエルストーブは不具合事例を公開する事で過去のお客様はもちろん、気になっている方にも安心して頂く姿勢を基本としています。