ヒミエルストーブの寿命延長を考える
ヒミエルストーブはヒートライザーと呼ばれる保温された筒を高温に保つ構造を持つ事で排気を絞っても巡行運転を可能にしています。
ちなみにこの燃焼制御アプローチを採用している薪ストーブは弊社以外で認知しておりません。
4年前に開発した時は如何に理想とする燃焼を実現するのかを第一に考え製品を作りました。
そして月日が流れ、熱による製品の摩耗具合が判明して来たので長寿命化の対応を実施できるフェーズに移行します。
僕は結構真剣に製品寿命の延長については模索を続けて改善活動のサイクルを回しているのだけど、ネームバリューのあるブランドが客先で発生する不具合にレスポンシブ対応しないのは何故なのかしら?
熱による摩耗
ステンレスで作ったサイクロンチューブも3シーズンが過ぎるころには熱による摩耗が進行して本体の下半分ほどは肉厚が薄くなります。
ですのでサイクロンチューブを使用できる期間の延長を狙い、肉厚が薄くなったら上下逆さまにひっくり返して使用できる改善を2021年に実施しました。
これにより1つのサイクロンチューブを摩耗の進行に合わせて従来の2倍の期間使用できます。
本体にはこの様にセットして使用します。
本体の熱摩耗が気になる
サイクロンチューブに炎が集中して高温となり摩耗するのだから、本体にも何らかのダメージが発生しているのは確実です。
実は2021年にヒートライザーの一番変形している部分を切り開き肉厚の減耗を測定しました。結果3年の使用で0.1mm程度の摩耗なので20年くらいは十分使用が可能だと判断しました。
しかし、世の中には絶対と言う事は存在しません。
サイクロンチューブの脚の摩耗を防ぎつつ、本体の劣化を防ぐ方法が無い物かと思案する事数か月。
遂に頭の中にとあるコンセプトが思い浮かんだのです。
それは、こんな形状の内筒をヒートライザーの最も高温発生部分に置いてヒートライザーの保護を行うと同時に、サイクロンチューブの脚とします。
写真はヒートライザーの上から撮影した物ですが、ステンレスの角パイプが2重になっているのが分かるかと思います。
そして、その上にサイクロンチューブを乗せる事で、燃焼により発生した多くの炎を内筒に誘導してベンチュリー効果を発生させるだけでなく、犠牲部品として劣化した場合にワンタッチで交換します。
ヒートライザー内部にこの様な交換式の内筒を置く事で本体の劣化を食い止めます。
時間を経る事で得る物
熱による減耗は実際に使ってみない事には判明しないので、対策も新商品発売から遅くなってしまう事は否めません。
しかし今回の改造は既存の顧客へも部品を追加する事で対応可能なアップデートなので簡単に提供できます。
熱による減耗対策は2年前くらいから頭の片隅に残っていた宿題だったのですが、今回の改造が問題解決の核心を突いていれば今後数年間は全く問題無く使用できると考えます。
ヒミエルストーブの製品寿命についてご質問頂いた時、今の所4年間は確実に使用出来ているので後6年使い続けて問題無ければ一応10年連続稼働と言う事になります。
現時点での個人的感想は、10年以上高温になる部分を連続使用する事はインコネルやSUS316を使用すれば可能かも知れませんが素材価格がホームユースを超えているので現実的では有りません。
なので、熱による摩耗を前提とする消耗部品と本体を区別して、消耗品で遮熱を行い本体の保護を行うアプローチを採用しています。
まとめ
外観は試作品の頃から全く変化していませんが、初期の頃は理想とする燃焼を追い求め、現在は製品寿命の向上を主眼に地道な改善を施しています。
お客様が日常使いで検出できるのは燃焼の改善であって、製品寿命は破壊されてから初めて認知できます。
なので今回の改善効果を感じる事が出来るのは10年以上経過してからかも知れませんが、今後もお客様へ安心して製品をお届けするには大切な改善だと考えます。
今後納品するお客様へは製品に搭載、過去販売のお客様へは脚のカットと言う作業が発生しますが、内筒を追加オプションとして対応させて頂ければと思います。