高熱による本体の摩耗を掃除のついでに検証
お客様の元で煙突と本体内部の清掃に立ち会った時に必ず行うのがヒートライザーとサイクロンチューブの摩耗確認です。
使用状況にもよりますが、初期に採用していた薄肉バージョンのサイクロンチューブは早々に摩耗してしまう事が判明しましたので現在は2倍の肉厚で加工しております。
そして肝心な部分である、ヒートライザー内部の状態は目視で観察する限り全く凹みや劣化を感じる事が無くてきれいな状態そのものでした。
ロケットストーブ構造を採用すると燃焼により発生した熱が1点集中するので通常の鋼材だとあっという間に劣化してしまいます。摩耗劣化対策に筒を2重構造にしても根本的な問題解決にはならず、内部が熱によるヒズミで波打ちパイ生地みたいに錆が積層して加速度的に劣化が進行して行きます。
そうならない様私はステンレスを使っているのですが、ステンレスの中にも種類が色々あって肉厚を考えながら最適な素材を選び、結果を検証しながら改善を行ってます。
なぜその様な事を考えるかと言いますと、一番最初に作った試作品たちは熱によりヒートライザーが波打って膨らんだり錆が発生して薄くなってしまったので絶対に改善が必要だと思ったのです。
本体の燃焼や気密、意匠などは作って実験すればすぐに結果が分かるのだけど、熱による劣化はある程度時間をかけて使い込む事でやっと不具合を検出できるので本当に手間が掛ります。おまけに過去に得た知見の差分で改善効果の検証が可能となるので僕しか持っていないノウハウになります。
僕の不勉強かも知れませんが、未だにロケットストーブ構造の薪ストーブビルダーが沢山出てこない理由の一つに熱による摩耗がどの様な形が不具合を起こすのか、またどのように対策を行えば課題をクリアランスできるのか分からない部分が多い事も一因であると推測してます。
だって先行事例が皆無の中、リスクを取って製品を作っても失敗しちゃうとダメージが大きいので躊躇する心情も理解できます。また無理にロケスト方式を選ばなくても通常のクリーンバーン方式でも十二分に性能を出せるのでわざわざ困難な方法を選択する動機は生まれないでしょうか。
ステンレス製のサイクロンチューブ脚は摩耗も少なく良い感じで形を保持していました。脚の周囲に灰が積もる事で本体の壁面を保護するので数年間使用して行くと摩耗すると考えていますが、去年から導入したので未だ寿命は未知数です。
ロケットストーブ構造で長期間の寿命を検証した製品を私は知りません。
誰も知らない事を実験を重ねて検証するって非常に面白いと感じるのは僕が変人の証拠かも知れないけど、例えば10年間寿命を維持出来たとすればこのジャンルで誰も達成していない事を成し遂げた事になると考えればテンションが上がります。
特に先例のない製品を開発し、販売、納入、保証のサイクルを回すには驚くほどの重圧と多くのタスクを処理する必要に迫られます。すべての仕事を一人で抱え込む必要は全くないけれど、人に指図されて動くのでは無く自分で課題設定を行い検証して行く能力が必要とされるので若干ハードルが高いかも知れません。
僕はそんな高めのハードルじゃ無いと乗り越える意欲が湧いてこない変態なので今位の難易度で丁度よいです。
とにかく、客先に納入した僕の製品に不具合が無くて本当に良かった!
それが一番言いたかった事です。