新作ストーブのテストに計器を接続するようになってから開発の解像度が劇的に向上しました。
特に内部構造の変更をダイレクトに確認できるので、設計の意図と効果の確認をシームレスに実施できる様になったのが非常に大きな収穫。
海外の規格を参考に作りこむ
今まではどちらかと言えば見栄えと自分の感性でストーブを作りこんでいたのですが、計器での測定を実施する様になってからは近年規制が厳しくなっている欧州やアメリカで施行されている薪ストーブに関する規制を参考にISを作りこんでいる。
排ガス規制は測定器を持っていないので実施できないけど、ドラフトや換気量、薪の詰めすぎによるオーバーヒート対策など普段の使用で危険な状態にならない構造を本体に備える為に計測したデータを活用。
まずは換気量
給気のスリットを徹底的に見直すことで、巡行時の換気量はおおよそ28m^3/h
これは欧米(EU Ecodesign / US EPA)の認証試験で最も需要の高い「6〜8 kW(中型〜標準サイズ)」のストーブが、定格燃焼(薪を約 2㎏ 前後消費する状態)を行っている際の給気量(25 ~ 35 m^3/h)にそのまま合致しています。
そしてこの場合のドラフト圧力は約15pa
この絶妙な空気量とドラフトのバランスが煙の発生が少ない、力強い燃焼をうみだしている。
もしかしてドラフト圧力が弱かったり、換気量が少ないと力強い燃焼を実装する事が出来ず、逆パターンだと早く燃えすぎるセッティングとなる。
なので現状の試作機は、ドラフト・風量ともに欧米規格の「定格燃焼テスト」をそのままパスできる基本スペックを備えていると判断した。
安全性の確保

次に行ったのが燃焼室へ目一杯薪を投入し、最大火力を発生させたときのデータを検証。
この状態のテストは高負荷燃焼(high-burn Category)と言われ欧米の認証試験(EPA Method 28R や EN 16510 など)では、最小燃焼・定格燃焼・最大燃焼の各カテゴリーでテストを行います。
もしかして薪を目一杯燃焼室へ投入したときに換気量が60~80m^3/hまで一気に跳ね上がってしまうと本体が異常加熱してしまいオーバーヒート発生のリスクが発生する
早くお部屋を暖める為や、就寝前に沢山薪を詰め込む事があると思いますが空気量の絞りを忘れた場合に燃焼温度がどんどん上昇する事を抑える為に一定以上の燃焼になれば空気の供給を抑える形を搭載したので、効果の検証を行うと
1時間あたりの換気量は約40m^3/h
いくら薪を追加しても15paの条件下にあっては、それ以上は空気が入らない設計とすることでオーバーヒート発生を予防している。
そして、今後はダンパー形状を幾つか試して、薪を沢山投入した状態でも換気量を巡行運転と同じ換気量に調整する事で「薪を沢山くべてもダンパー操作で長時間マイルドに燃やせる」と言う欧米市場でも人気の高い特性を実装する予定。
今回作ったISは国産の手作りだけど、燃焼特性は海外の輸入製品に近い出力になる事を狙っているのでお客様の反応が楽しみ。
失敗から見つけたロジックベースの製品開発
私はおしゃれなデザインやエッジの効いた広告を発信する能力が少ないと自認しています。
しかし、ロジカルに物作りの仕組みを積み上げて行く行為は結構自信あり。
なんだかよく燃えない、燃える速度が速い、煙の発生が多い。などは全て理由が存在している。
そして自分自身への反省でもあるが、今までは作り手の技量やデザインへ向ける意識の量が多かったのだけど、今回の経験から得られた教訓は 実験から得られたデータを参考に製品開発を行うという事は非常に強力な武器になるという事です。
デザインで存在を主張する事も大切だけど、その内部に内包する機能を過去に作った製品より少しでも良い形にして世に発表できると今後の展開が面白くなるのではと予感します。
散々不具合の解消を悩み続けたISの開発だけど、もう出口が見えてきた気分。今回の過程を振り返ってみれば、悩んだ時間の方が後になって財産になっているのが不思議。
やっとこの一言が言える所まで来た。
「製品に結構自信あり。」

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