薪ストーブの煙でお困りの方へ、煙が発生する理由と対策
薪ストーブから煙が発生する事を恐れて導入をためらっていたり、現在使っていて何とか煙を減らしたいとお考えの方って結構いると想像します。
極論すれば煙の出ない薪ストーブなんて存在しないので、何とか煙が出ないような運用を心がける事が大切です。
いくら無煙と言い張っても、焚き付けの時は必ず煙が出ます。
薪よりも遙かに高効率のファンヒーターやガソリンエンジンでさえコールドスタートの時に少し臭いがするように、有る閾値を超えた高温状態が無ければ無煙状態を作り出す事は出来ません。
煙の正体
黒煙の発生理由を明快に説明してくれる本から理由を抜粋します
小型焼却炉における燃焼は大部分ガス状になって起こることは前節で述べたが、このガス状態の成分は炭素と水素から出来ている炭化水素である。
この炭化水素は、2.2で述べたように水素の方が炭素より燃焼性がはるかに良いため、よほど燃焼条件が良くないと水素だけ燃えてしまい、後に未燃の炭素が残り、これが黒鉛となって発生するのである。
(出典) 小型焼却炉-選定と維持管理-
著 三好 康彦 公害対策技術同友会 P9 2.4黒煙発生理由より抜粋
参考資料によれば、木を加熱すると木が直接燃えるのではなく、加熱された木から発生する燃焼ガスが燃えるそうだ。
そして可燃物を熱すると水素と炭素からなる炭化水素が発生して、燃えやすい水素が先に燃焼してしまい炭素が煙となって残ってしまうのです。
煙ってざっくり言うと可燃物を加熱して発生した水素と炭素の化合物だったんですね。
じゃ、煙の元となる炭素を燃焼させれば良いんですがその場合必要な3要件があって
- 酸素との混合
- 高温の維持
- 高温の滞留
この3要件をバランス良く成り立つようにすれば煙の発生が少なく運用出来ると言う事になります。
ガスと空気の混合
高温に加熱された空気とガスを混ぜ合わせることで煙の出ない燃焼条件になります。
ばい煙(ここでは主として黒煙とする)防止の決め手の1つは両者をよく混合することである。空気と良く混合した可燃性ガスは燃焼速度が早く、火炎が短くなる
(出典) 小型焼却炉-選定と維持管理-
著 三好 康彦 公害対策技術同友会 P12 3.1 ガスと空気の混合より抜粋
積極的に撹拌して混合することがとても大切なポイントであり、特許取得技術のサイクロンチューブは正にガスと空気の混合を効率的に行いながら熱を滞留させる機構になっています。
燃焼ガスの流れに頼って撹拌するのでは無く、構造的に空気と可燃性ガスを混ぜ合わせることで炭素の燃焼を行っていると言う訳です。
燃焼室内温度
次に、燃焼室内温度をある一定以上の状態にしておけば、ばい煙の発生を防ぐことができる。燃焼室温度は熱分解ガスの燃焼温度によって生じる物であるが、熱分解によるガス発生が一定ではないため、燃焼温度もそれに従って大きく変動する。
そのため燃焼室内の温度も著しく変動し、一時的でも温度が低下すると、ガスの一部は不完全燃焼してばい煙を発生する
(出典) 小型焼却炉-選定と維持管理-
著 三好 康彦 公害対策技術同友会 P12 3.2 燃焼室内温度より抜粋
参考資料によると、空気との撹拌の次に燃焼室を高温に保つことが炭素を燃焼させる事に必要な項目となります。
薪ストーブだと薪の燃焼がピークアウトを越えて、おき火から更に小さな火になった時に大きめの薪を投入すると煙が発生するのは、冷えた燃焼室に煙まで燃やすだけの熱が保存されていないと言う事になります。
ヒミエルのサイクロンストーブは、ヒートライザーに蓄熱する事で温度変化を一定に保てる構造を採用しているので、燃焼温度の変化が緩やかで煙の発生が驚く程少ないです。
よく煙の発生が少ないとか言いますが、屋外で見ると空の色と同化して僅かな煙は確認する事が困難です。
しかし、私は自社工場内部に煙突を開放し屋内で煙を確認しているので間違いはございません。
燃焼室内滞留時間
この項目が結構大切で
ガスと空気が一定時間、燃焼室内に滞留するとばい煙の発生は見られなくなる。
燃焼した高温の可燃性ガスを燃焼室内へ滞留させる事ができれば、炭素を燃やし尽くして煙が見えなくなると言う事です。
高温の燃焼ガスを燃焼室内へ滞留させたいと思っても、従来型のクリーンバーン燃焼薪ストーブでは不可能です。
なぜなら、保温された煙突内部の浮力により燃焼室へ空気が吸い込まれる構造の制約で、煙突を有る閾値以上絞って運用する事が出来ない。
構造上の制約により、燃焼ガスを滞留させる事が出来ないので、空気と可燃ガスの撹拌、そして高温の維持で煙の削減をコントロールします。
しかし、ヒミエルストーブはサイクロンチューブで確実な空気と可燃性ガスの混合を行って高温を発生させ
ヒートライザー内部は勿論の事大きな躯体へ熱エネルギーを貯める事で強力な上昇気流を作り出す事が可能になります。
それにより、排気を大きく絞り可燃性ガスを滞留させる条件下での連続燃焼が可能になりました。
動画を見て頂くと、ガスが滞留して緩やかに燃焼する事がおわかりになると思います。
編集無しで確実な無煙状態です。
まとめ
従来型薪ストーブで煙を削減するには
上から着火スタートで、炎の大きさに応じた薪を燃焼する。
とにかく、くすぶらすのでは無くてしっかりと木を火だるまにしてから空気を絞る。 良く乾いた太すぎない薪を使う。
その位で煙が少ない運用が出来ると思います。
ここまでは良いことばかり書きましたが、もちろんデメリットも存在しております。
絶対に乾いた薪を使って下さい。
排気温度が低いので、湿った薪を燃やすと木酢液の発生と大量のススが煙突に溜まります。
その量は想像以上に多くて、湿った薪で空気を絞り運転したらたったの1カ月で煙突の半分くらいススが堆積します。
世間で販売されている薪ストーブを参考にするのでは無く、私の本業である産業用エンジニアリングの知見を薪ストーブに応用して開発したのがサイクロンストーブなのです。
先行他社の後追いをするのでは無く、原理原則を元に製品に落とし込んで行く手法は見本も無くて完成するまでは本当に苦労の連続でした。
しかし、ある程度方法論を掴んだ現在になって振り返って見ると世間に同じ物が販売されていない唯一無二の製品となっております。
今まで遠方から多くのお客様が見学にお越し下さり、そして、お世辞かも知れませんが全ての方に燃焼性能をお褒め頂きました。
世間に比較する物は有りませんが性能は一目瞭然なので、興味の有る方はお問い合わせのメッセージから見学にお越しになって下さい。