天と地をつなぐ オンドルワークショップ (製作編)
日本に住んでいてオンドルに興味を持ち検索しても、情報量が少ないし写真で見るだけじゃ詳しいことは分からないけれど、4日間古民家にオンドルを設置するワークショップを通じて大まかな流れと思想を学ぶ事が出来ました。
検索でヒットするオンドル情報は、どちらかと言えば導入してからのユーザーレポート的な話が多いので、薪ストーブメーカーの僕とは目の付け所が違うのが勉強になりました。
今回オンドル製作の流れは4人が中心メンバーとなって開催されました。
●施主 「山田さん」 ●イベント企画 「キソン君」 ●オンドル職人「オハイオ君」「ヨンジュさん」
オハイオ君は今回で作ったオンドルが15台目になるそうで、検索でヒットする写真を見せると2つ目に作ったオンドルだと即答する位過去の現場を明瞭に記憶していました。
キソン君はアースバック(土嚢袋)建築のプロだし、施主の山田さんは過去にオンドル製作の経験があり陶芸家でメンスンリヒーターのビルダーなので各分野のプロが集結していました。
オンドルは毎回住宅に合わせた専用設計で施工され、施工経験が次回に活かされブラッシュアップされて行くのでオンドルにご興味有る方は経験豊富なオハイオ君チームにお願いする事をお勧めします。
いつの日か僕がオンドルを自宅に入れたくなれば、迷い無く今回のメンバーにお願いしようと思う位、腕と良心の備わった素晴らしいチームです。
イベントに参加した感想はこちらの記事です
築150年古民家への施工
古民家なので基礎なぞは有るはずも無く、工事を行うために土間まで構造物を撤去します。
現地へ私が到着した時は、カマドの基礎へコンクリートを打設していました。 最終仕上げ高さを水盛り缶やレベルで根太へ墨打ちを行いカマドの高さを差し引いて基礎を作ります。
土からの湿気対策にビニールを敷き、その上にモルタルを流し込みます。
翌朝には固まるので、私はカマド製作チームに所属して耐火レンガでカマドの仮組を行いました。
カマド製作は仮組→現地組み付け→完成と完成まで3日間を必要とします。
他のチームはオンドルを設置するエリアを取り囲むようにコンクリートブロックを積んで行くチームと煙突製作及びケジャリ(冷たい空気の滞留部分)製作に分かれました。
薪ストーブと同じくオンドルは焚き付けの時、床下及び煙突に滞留した冷たい空気が漬け物石のように焚き付けの上昇気流を止めてしまい、焚き付け口から煙が逆流してしまう事があるので,
溜まった冷たい空気を流れ込む下囲所をケジャリと言い、とても大切な機構になります。
この様な住宅に応じた設計のさじ加減が、左官屋さんと経験のあるオンドル職人との大きな違いだと思います。
ブロックの積み上げはプロの左官屋さんのユータ君と八ちゃんが応援に駆けつけてくれたのでもの凄いスピードで壁が築かれて行きました。
ブロックが積み上がると、ブロックの室内側へにコンクリートのテストピースを積み上げ、土モルタルで壁を塗り煙道を作ります。
言葉にすれば僅か2行の作業だけど、道路から現場まで大量の重たい資材を人力で運ぶので馴れない僕には辛かった。
オンドルの核心部分
薪ストーブは煙突が重要。
ではオンドルはと言えば、僕の見解は床下の煙道レイアウトと燃焼室の場所でしょうか。
オハイオ君に本場韓国の施工例を見せて貰いましたが、一応の定石はあるけれど施工値段帯や、ビルダーの個性により施工方法は住宅に合わせてアドリブ的な要素が多いです。
床をまんべんなく暖めようと思うと、絶対に火に近い方が暖かく、煙突に近づくにつれ冷たくなって行くのは誰の目にも明らかなので、煙の流れをイメージしながら床下の煙道を作り上げて行きます。
流速を高めたいと思えば体積を小さくしたり、燃焼室をお部屋の中央まで伸ばしたり、本当無限のレイアウトがあるのですが韓国では、ほとんど公開されているそうです。
薪ストーブ屋の目線
燃焼室は耐火レンガでオーソドックスにくみ上げていますが、欧州製の薪ストーブの様に燃焼室内部へバッフルを取り付け可燃性ガスをなるべく滞留させて煙りすら燃焼する高温を作り出すアプローチはメジャーでは無いのかと疑問に思いました。
焚き付けの逆流対策として電動ファンで内部の空気を吸い上げるのは最も簡単な方法ですが、床下部分の体積が大きいので実験しないと答えは分からないけれど草を焼く灯油バーナーなどで煙道内部を直接予熱すると逆流が減るか実験してみたいと思いました。
欧州の石積み製ストーブ「メイスンリヒーター」には焚きつけ時にバイパスを開いて浮力が強くなるまでバイパスから排煙するように、最近のムーブメントとしてバイパスの設置があるのは合理的だと思いました。
ひたすら石積み
煙りの通り道が出来上がると、後は床材の取り付けです。
床材は御影石を使い、石のつなぎ目には漆喰と銀杏粉を使い煙の漏れを防ぎます
最初の土間からこの状態まで4日、文章だけ見るとサクサク左官仕事が進んで行くように感じるかも知れないけれど決してそんな事は無く、毎日筋肉痛で泣きそうでした。
まとめ
最初のリード文でも書きましたが、オンドルは誰に作って貰うかが重要な選択ポイントになると思います。
熱の配分は経験値が如実に表れるので、左官仕事が出来れば見た目は作る事は十分可能だけど果たして床全体を暖める事が出来るのかは別問題だと思う。
また、信頼関係に基づいた良好なチームワークが大切で、僕も含め個性の濃いメンバーがお互いリスペクトしながら作業を進めて行くので肉体はしんどくても、楽しくて仕方無かったです。
オンドルと言う名詞を知って興味があるのなら、一度ワークショップへ参加する事をお勧めします。
また、今回は施主の家に泊まり込んでの作業で、毎食12人分以上の美味しい料理を用意して製作チームをサポートしてくれた婦人部の活躍が無ければここまで作業を継続する事は出来なかったと思います。
普段の僕は小食ですが、蒸し暑い中の重労働は、食べなきゃ体力が持たないのでいつもの倍以上食べるようにしていましたが、本当に美味かった御飯に感謝です。
今回は床材仕上げの関係でワークショップ開催期間中の4日で火入れまで出来なかったけれど、今年の冬は再び訪れてオンドルの上で暖まりながら忘年会をしたいと思っています。