カマドの製作
12月の平常営業を27日で終え28日から冬休みに入りました。
営業中は注文を頂いたストーブの製作に忙殺されており、興味のある分野の工作に取り掛かる時間を取ることが出来なかったので、お正月休みを利用して以前より材料を手配していた改良カマドの製作を実行しました。
改良カマドとは
写真の様なカマドは左官屋さんが粘土やレンガを積み上げて作り、1つのたき口の上に1個羽釜などを置く構造で見た目の迫力や造形は素晴らしいんだけど薪の消費量が多いのが弱点。
そして焚口に扉が無いので煙の逆流が発生したり、煙突が備わっていないので調理場に煙が充満したりと現代の視点からみると使い勝手が良い物とは言えません。
なので薪の消費量が少なく、しっかりと調理ができる燃費の良い改良型のカマドが大正時代から戦後にかけて広く広まりました。 色々な形状が有って書籍にも紹介されており国会図書館のデジタルアーカイブで閲覧できるので気になる人は調べると面白いのでどうぞ。
お料理と暖房は求められる特性が大きく異なる
毎年2月に手前味噌を仕込む為に寸胴に水を張って大豆を煮るのですが、ヒミエルストーブを使用した場場合とにかく沸騰するまで物凄い時間を必要とすることがストレスでした。
ヤカンやお鍋程度の水分量であればすぐに沸騰することは可能だけど、30L以上の水が入った鍋だと2時間以上の加熱が必要なのでじれったくて仕方ない。
ここで判明したのは、いくら燃焼効率の良いロケットストーブと言えども鍋に衝突するエネルギーは熱風で有り燃焼している炎よりも温度が低いという事です。
そんな私のお気に入りがこちら。
なんの変哲もない時計型ストーブだけど、ロストルに断熱処理を行ってバッフルも改造した沸騰強化version。 羽釜に8分目のお水を入れてもあっという間に沸騰する、餅つきには必須のアイテムです。
ではなぜ短時間で沸騰するかといえば、炎が羽釜の底に衝突することで熱を効率よく交換するから。ロケットストーブとの違いは炎が直接お鍋に接触して熱交換を行うので沸騰が早い。
そしてこの違いこそが暖房器具と調理器具に求められる特性が大きく異なり、それぞれに応じた設計を行うことが効率的な装置を設計する基礎となります。
生成した熱をどのように配分するのか
薪ストーブやカマドを設計する上で大切なアプローチがあってそれは「燃焼によって発生した熱をどのように配分するのか」問題があります。
今回はカマドの話なので、カマドで例を挙げると
燃焼によって発生した熱を100とすれば、理想を言うとガスコンロのように全ての熱を調理器具に投射できれば良いのだけど現実は様々なロスが発生します。
(本体の素材問題)
ネットを検索すれば赤レンガや粘土で作ったカマドが沢山ヒットします。
そしてこれらの素材は完全ではないけど耐火物なので熱による摩耗に強い特性がある。
しかし一つ大きな弱点があって、それは燃焼熱を素材に吸い取って蓄熱しちゃう。
お料理に火力を必要としているのに、カマド本体が熱を吸い取って貯蔵してしまうので調理に使用できる熱が減ってしまいます。
家のガスコンロに例えると、ガスを点火してお鍋を乗せると、ガスコンロ本体が蓄熱するので燃焼にて発生した熱の一部が本体に奪われると同義。
可能で有るならば熱はすべて調理に使った方が効率的なのでは?
家のガスコンロを暖房器具に使用する事が無いように、カマドも調理に特化した方が便利だと思ってます。
そしてもう一歩踏み込んで、オーブンを搭載すると言うアプローチもあるのですがそれこそ毎回使用するのであればメリットを考慮出来るけど時々しか使用しないのであればデメリットが大きいと考えます。
なぜならシステム全体の熱エネルギー総量が変化しない状況でオーブン室を昇温する為に燃焼熱が消費されてしまい、使用頻度の高いコンロへの放熱が減ってしまうから。
なんでも使える汎用性の高い道具って一見秀逸にみえるけど、実際は頻度の低い機能を省き単機能に絞り込んだ方が道具としての使い勝手やシステムが強靭になります。
シンプルが一番強い。
なので、オーブンを搭載する事にたいして、私は否定的なスタンスです。
そして、熱配分の核心になるのですが炉材に断熱レンガを使用する事で本体への吸熱を押さえて発生した熱の大部分を調理に利用するのが最も合理的。
参考図書
今回作ったオクドさんは私が考案した物ではありません。
以前より効率的なカマドの製作に興味が有って情報を収集する過程で、とある自費出版の書籍を入手できたことが大きな転機になりました。
ロケットストーブのマニュアル本などマニアックで濃密なノウハウが詰まった出版物って自費出版の書籍が多く第1版で廃盤になる事が多いので非常に貴重な存在。
そして著者の方が記述されている内容は、私と表現は異なりますが非常に真理を掴んだ内容で有り単にストーブの外観を撮影した書籍とは内容の深さが全く異なります。
端的に言って、今回の製作を通して多くの学びと気づきを得ることが出来ました。
今回の記事はここまでとして、次は制作過程をアップします。