ゆっくり燃焼する事が高性能の指標?そんな事無いっしょ。
新機種の1時間あたり最大発熱量を計測しながらタイトルのトピックが頭の中をよぎりました。
私自身の勘違いを素直に告白するのは恥ずかしいのですが、昔は少ない薪でゆっくりと燃焼する事が高性能の代名詞だと思い込んでいました。
例えるなら、わずか500gの薪で1時間連続燃焼できる事がすげーだろ〜みたいな感覚を持っていたのです。
しかし今は性能のある一面だけに焦点を当てた判断であり暖房器具としての本質から少しかけ離れた機能に価値を見出していたと思う。
確かに少量の薪をスロー燃焼できる事は素晴らしい、しかし暖房器具の目的って何なのかと言う根源的な命題に立ち返って考えると単に弱火で暖房しているだけじゃないの?と言う簡単な結論に収束する。
木材工業便覧P243 (1951より引用)
薪を毎時1kg燃焼すると含水率が0%で4562(kcal/kg)の熱量を発生し、一般的に推奨される含水率20%の薪1kgの発熱量は3476kcal/kgです。
煙突への排熱や木質ガスを熱に変換するロスを全発熱量の半分とすれば1kgの薪を燃焼して得られる熱は1738kcalとなる。
そして薪の消費量が1時間に500gと言うことは1㎏を燃焼した半分の、わずか869kcal/hだけしか暖房に使用できない事じゃない?
石油ファンヒーターに置き換えて考えてみると、運転モードによって消費量が変動するけど平均で毎時0.2Lの灯油を燃焼して得られる熱量は1753kcal/h 、これは1kgの薪を1時間燃焼して得られる熱量より少し多い程度。
そして石油ファンヒーターで通常運転の半分の灯油消費量だと発熱量も半分になると即座に理解出来るのに、何故か薪で考えると消費量が少ない事が秀逸という事になってしまう。
もちろん、小さな炎で煙も発生せずに長時間クリーン燃焼を維持できる性能は素晴らしいし私自身も憧れていたので否定はしない。
しかし、単なる小さな炎での運用が高性能と近似した解釈に違和感を感じるし個人的には認知がズレていると思ってます。
そして、いやいや自分の家は弱火でも十分暖かいです。と言えるお宅は住居の性能と暖房器具の出力が合致しているだけなので物事の本質は住環境と器具のマッチングが何よりも大切だと言う当たり前の答えになるし、それ以上大切な事は無い。
そしてもう一つ当たり前と思う話があって
「住宅の低気密、低断熱を器具でリカバーできない」
スカスカの家をいくら温めても空間が温まる事はありません。
茅葺の古民家でも、間仕切りを行い内天井があれば空間を温める事は可能だけど、部屋から藁が見え材木が収縮して土壁の隙間から外が見えるような状態であれば例えどの様な薪ストーブを何台導入したとしても暖かさを保つ事は不可能です。
そのような場合、薪ストーブを導入する以前に断熱リフォームをする方が1年中効果を感じる事ができるので一部分でも良いから断熱を行うことを先に考えられた方が良いと言うのが私のスタンス。
そして話は最初の最大暖房能力の測定に戻るのだけど、これも本当にいい加減な指標で、なかったら機種選定の判断ができないけど、測定結果のばらつきが大きすぎて当てにならない。
1時間あたりの薪消費量から最大発熱量を計算するのですが、樹種や薪の太さによって燃焼速度が大きく変化する。
例えば3寸の杉角材を28cmにカットすると約1Kgになるんだけど、3寸角そのままを2本を投入するのと3寸角を4つに割った物を8個燃焼室に投入するのでは重量が同一でも燃え尽きる速度が全く異なる。
新機種のICで薪の消費量を最大消費量を試してみると1時間に3.0~3.5kg燃焼することができました。間をとってざっくり7500kcalの最大加熱能力があると計算上数値が出る。
火力計測については統一されたテストの指標がないので、曖昧さを感じる数値になるのは致し方ない。
しかし、今回の考察で素早く加熱する王道をクリアに認識したのは大きな成果であり、それは細めの薪をしっかりと燃やすサイクルを継続すると言う誰でも知っている話なんだけど、細薪をじゃんじゃん燃やすと昇温速度がとても速いので寒さに震える朝などにお勧めです。