先日、一緒によく仕事をする大工さんと現場下見に行ってきた。
場所はとても大きな古民家のレストラン。太い梁が走る天井と年季の入った空間の真ん中に、鋳鉄製の薪ストーブがどっしりと座っている。冬の間はこのストーブが場の中心になっているそうで、料理だけでなく空間の温かさもお店の魅力になっているとオーナーさんが話してくれた。
相談の内容は、煙突を全部やり直したいというものだった。
現場を見て、すぐに分かった
煙突はシングル管で、横引きが約3メートル。
シングル管というのは断熱層のない一重の煙突のことで、管の温度が下がりやすくドラフト(煙を引き上げる力)が弱くなりやすい。そこへ横に3メートルも引いてしまうと、ドラフトはほぼ期待できない状態になる。その結果がどうなるかというと、煙が上に行かなくなる。
この現場では煙突の出口に換気扇を取り付けて、機械の力で強制的に煙を吸い出しながら運用されていた。換気扇が止まれば煙が室内へ逆流するリスクがある。それだけでも十分問題なのだが、屋根に上がって外側を確認すると状況はさらに深刻だった。軒先部分の煙突は叩いて変形させられており、樹脂製の雨樋との離隔距離は僅か数センチ。火災リスクとして見れば、見過ごせない状態だ。
さらに、煙突の中心を確認するためにレーザー墨出し器をストーブの煙突口元に合わせて電源を入れると、煙突が左に大きく湾曲していることに気付いた。外観の仕上がりだけでなく木部との離隔距離など、私の設計では絶対に行わない施工が続いていた。反面教師として、非常に勉強になる現場でもある。
オーナーさんは「なんとなく不安で」とおっしゃっていたけれど、現場を確認した瞬間に不安の正体がわかった。感覚的に気になっていたことが、実は正しかった。
やることはシンプルです
今回の提案は、既存の煙突を全て撤去して、二重断熱煙突でまっすぐ屋根まで立ち上げるというもの。二重断熱煙突は管の内側と外側の間に断熱層があり、煙の温度を高く保ったまま排出できる。温度が高ければドラフトが安定するので、換気扇に頼らなくてもストーブ本来の力で煙を出し切ることができる。
ただ、利便性の話はあくまで副次的なもので、本質はもっと深いところにある。現状は安全性を犠牲にした上で成り立っている施工であり、このまま運用を続けるのは危険と判断した。もし二重断熱煙突への更新が難しいのであれば、薪ストーブを撤去して石油ストーブ等に入れ替えることをご提案するつもりだった。
やることはシンプルで、正しい煙突に替えるだけだ。それだけで運用の不安はなくなる。
お店の定休日に合わせて、少しずつ進める
現在も営業中のカフェなので、工事は定休日に合わせて進めていく形になる。工期は長くなるけれど、お客さんに影響が出ない範囲で進めるのが最優先だ。オーナーさんのお店の日常を守りながら施工するのは、当たり前のことだと思っている。
信頼できる大工さんと組める現場はやっぱり楽しみだ
一緒に現場を回った大工さんとは、これまで2現場ご一緒している。段取りが正確で、現場での判断が的確な方だ。煙突工事は建物の構造に直接手を入れる仕事なので、誰と組むかで仕上がりも現場の安心感もまるで違ってくる。この大工さんとまた仕事ができるのは、純粋にうれしい。
今の煙突が気になっている方、一度現場を見せてもらえれば正直にお伝えします。

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