アルテックの架台を製作
去年に1度作ったアルテックの架台のリピート依頼を川原さんより頂きました。
去年、架台のご相談を頂いた時は単にストーブの下へ鉄で作った枠をねじ止めすれば良いと安易に考えてOKしたんだけどこれが大きな見積もりミスで、作業は非常に苦労しました。
製作に関する難易度は高くないです、図面さえあれば誰でも作る事が可能なのは間違いありません。しかしそれ以外の部分で非常に配慮が必要になるので作業速度が異常なほど遅くなってしまうのです。
第一に本体を吊り上げる場所が皆無。
今回のご依頼はオーブン付きの最大モデルで重量は280㎏。なのに、どこも持ち上げることに適した場所が無いのです。
採寸を行い、枠を作った後に仮置きして寸法確認、固定、木製パレットへの固定など各フェーズ毎に上下動が必要になるんだけど持ち上げることに適した場所が無いんです。
第二に石製の本体
スチールだと最悪傷がついても何とか補修可能ですが、石なのでクラックを入れてしまったり、傷をつけちゃうと修正が出来ないことに恐怖を感じます。
第三に保険がきかない
私が加入している損害保険の担当者に確認したところ、請負業務における支給材の破損は保証対象外と教えてくださいました。
という事はですよ。
作業性が悪い→傷ついたら修正出来ない→壊すと自腹で弁償となる恐れが頭の中に浮かぶんです。
そしてアルテックの定価は110万円で国内在庫は無い。
恐怖を感じる要素がすべて揃っているし、僕も誰かにお願いしたい!
私が感じている恐怖を正直に川原さんへ告白させて頂いたところ、何かあったら相談してくださいと優しく僕の不安を軽くしてくださったので今回の仕事を受けることを決心。
作業自体は前回の記憶が残っているので吊り上げ方法を工夫して順調に進みました。
架台の溶接時に、この間作った穴あき溶接定盤が大活躍です。何の拘束もないと溶接のひずみで架台が反り返ってしまうんですが、クランプで押さえることにより溶接時の材料移動が発生せず精度の高い部品を作る事ができます。
作業のついでに本体内部を見学。
ストーブ製作者の視点からエアの供給経路を見ると、燃焼室の大きさに対してエアの通路が小さいと感じました。 おそらくだけど、点火時の冷えている時はドアを少し開けて吸気のアシストを行い、本体が温まった状態で丁度良く燃焼する設計になっているのでしょう。
ネスターマーチンも吸気経路の大きさは異なりますが、アルテックと同じように本体天板で吸気を余熱している設計なのでオーソドックスな手法なのだと想像します。
そして2日弱を費やし完成した部品がこちら。
まったく地味で一見すると、どこが変わったのかわからないくらい位で丁度良い。
最初は尻込みしていたけど、ストーブの構造をしっかりと勉強できたし重たい市販ストーブの取り扱いも何となくわかるようになって来たので良い経験に感謝です。
市販の薪ストーブにボルトオンで取り付けることの出来る特注の架台など必要な方はどうぞお気軽にご相談ください。