蓄熱小型ストーブの開発
先月に完成図面の記事を書いた蓄熱小型クリーンバーン薪ストーブの開発は順調に進んでいます。
クリーンバーン機を作るのは約8年ぶりなのですが、ロケットマスヒーター、蓄熱ストーブ、市販ストーブの改修と多岐にわたる薪ストーブの構造を学んできた経験が大いに役立ってます。
写真で見る外観は単にデカい鋼管と四角い箱ですが、中身は至上命題であるコストを抑えつつ制限のある中で最良の燃焼を行うようにチューニング。
個人的な見解として、クリーンバーン機の構造的な3要素のバランスで燃焼の性格が大きく変化します。
それは
吸気系統(余熱も含む)
排気系統(煙突も含む)
燃焼の抵抗(バッフル、燃焼室の容積)
あとは薪の乾燥や樹種によっても大きく燃焼の性格が変化するけど、それはユーザーでコントロールする変動要因なので今回は除外。
そして、気持ちよくコントロールしたいと思うのであれば2重煙突の設置は必須だと思ってます。
自作薪ストーブメーカーの人は市販品の構造について私も含めて不案内な人が多いと思っており、ストーブメーカーが時間と労力をかけて開発した製品を観察するという事は大きな学びが有ります。
そして、仕事の中でいろいろなメーカー品を観察する事により上記3つのパラメーターの組み合わせが燃焼の性格を決定付けるという事に気付きました。
それを踏まえて今回の要望を整理してみると
「寸法と見た目が良ければ中はだるまストーブの構造でOK」と施主様には言われたのですが
せっかくの新開発なのに単に薪が箱の中で燃えているだけなんて面白くないし私が作る理由もないからシンプルな外観の中にしっかりと良好な燃焼を確保する構造を盛り込みました。。
バッフル
もう知っている人には説明の必要が無いくらい超絶重要部品。
本体内部で一番高温になる場所で、燃焼ガスを滞留させて2次燃焼空気と酸化を起こす場所。
これが無いと煙突へ熱と煙が速攻で抜けるので薪の燃焼で発生する熱の5割超を廃棄する恐ろしい事態になる。
この製品にはバッフルに耐火煉瓦を使用して、さらに煙突へ直で熱気が通過しないようにもう一つバッフルを追加。
バッフルの角度や素材、天板との隙間、煙突直下の抵抗、摩耗による交換の考慮など仕上がった時の出力をイメージしながら設計できる様になりました。
吸気
今回はシンプルにエアカーテンと灰受けから吸気する設計。
サウナで運用を行い、灰処理を簡単に行いたいとのご要望だったので交換式のロストルを採用。
ここにもポイントが有って、アマゾンとかで売ってる中華製は絶対に採用しません。なぜならスペアパーツが必要になる頃には廃盤やモデルチェンジしている可能性が大きいから、国産のロングセラーモデルのパーツを流用。
排気
私のご提案で煙突は新宮をセレクトしました。
完成形は本体の周囲に石を巻くので、一度蓄熱すれば柔らかな輻射熱が心地よいと予想してます。
今回は施主さんからのご要望で設計しましたが、これから増える高気密住宅へ薪ストーブを導入するのであれば小さくて蓄熱性の高い製品がぴったりでは無いかと思っていたので今回の知見を活かしてヒミエルストーブに新たなラインナップを設けたいと考えてます。
将来へ繋がる経験なので、コストを抑えつつ妥協のない設計を実施したのでテスト燃焼が楽しみ。