今年も残すところ僅か。
振り返れば鉄の薪ストーブを作るだけでは無く、耐火レンガを積み上げて作る蓄熱ストーブを作ったのが大きな経験経験になりました。
蓄熱ストーブは良いよ。
そのようなコメントを見聞きするたびに「へー」と思っていたのだけど、いくら良いと聞いても体験したことが無いのでその良さを心から理解する事が出来ませんでした。
目的により形を変える

この形を作り上げた時は気分が上がっているので、形が完成しただけで舞い上がっていました。
しかし、何回も運用を継続してゆく過程でこの形の個性が明確になって来たのです。
それは蓄熱ストーブジャンルの中では比較的、昇温と冷却が速い。という事。
レンガが1重なので形が個性を表現していると言えばそれまでなのだけど、私の知る限り同じ部屋でレンガを1重と2重に組み替えて比較実験を行った情報を見たことが有りません。
そして、個性が悪いと言う訳では無くて自分の使用目的に合致していれば良い器具と判断するので、最も大切なのは自分の中にある基準を明確にする事。
しかし、最初はその基準すら持ち合わせていないので比較実験を行って自分の中で差異を感じる作業が必須となる。
その為に支払うコストは時間と労力になる訳で、製品開発と言うものは目に見えない場所で多くの時間を費やしてます。
もちろん、海外の文献を検索すると沢山の図面を見つける事が出来るしそのままコピーすれば良い製品が出来ると思うけど、1個しか製品の性能を知っているだけでは知識の範囲以上の謎に出会った時に理解できない事態に陥るので、私は自分で考えて手を動かす方が好み。
自分の主張はこの辺にとどめ、このストーブを作っていた時に目指していたのは
サウナ利用の時に室温が70~90度まで昇温して2時間アツアツに利用できる性能。
求めるレンジに室温を上げるためにはレンガは1重が必須。
逆に2重だと室温を40度以上に上げようと思えばとても時間を費やすので負担が大きい。
なので、室温をグワッとあげてジリジリと熱波を感じたいのであればこの形が正解という事になる。
その代わり、本体に貯めることの出来る熱量は重量と比例するので長時間の温浴は出来ません。
2重化による出力の変化

先ほどのストーブの周囲に赤レンガを置くだけで出力特性が大きく変化します。
もう、別のストーブと言っても過言でないくらい大きな変化なので面白い。
まず、昇温に必要な時間が2倍以上必要。
1重だと2時間程度の火焚きを行えば2時間後、なのでスタート4時間でお部屋が温まってくるのだけど
レンガが2重になれば同じ火焚き時間でもお部屋が温まってくるのがスタートから6時間くらいタイムラグが発生する。
その代わり室温が高くなりすぎず、翌朝まで暖房を継続するので釣鐘状のグラフで説明すると
1重はピークが高くて両方の裾の感覚が狭い湯呑型
2重はピークが低くて両方の裾が広い茶碗型
この様にイメージすれば分かりやすいでしょうか。
そして、特性自体には優劣なんて無くて、どのような運用を行うかで選択肢が変化するだけの話になるし、お客様の要望を聞きながら最適な提案を行う引き出しの多さが私の強みと言う事になります。
材料は簡素なので蓄熱ストーブを自力で作る事はハードルが低いと思います。
しかし、作り上げたものが自分の望む出力になるかと言うのはまた別の話で、その辺りのソフト部分が俗人的なソフトウェアで有り経験でのみ積み上げて行く知見では無いでしょうか。

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