長野県でサウナ施設を運営するサウナtenさんから、蓄熱ストーブ用ドアの制作依頼を受けた。ゴールデンウィークのリニューアルに向けて、DIYで絶賛蓄熱ストーブを構築中とのことだった。
DIYで蓄熱ストーブを作ることの難しさ
蓄熱ストーブなんて原理を突き詰めればレンガを積んで薪を燃やすだけ、という構想は理屈として単純だ。しかし実際には、燃焼空気の経路設計、天板が熱と水の急冷で大きく歪んでしまう、経年劣化による部品摩耗に対して交換できる構造の担保など、外から見ただけではわからない細かい判断が積み重なる。知識ゼロからの構築は、私のような薪ストーブ経験者でも数回やり直しが前提になる作業だ。
経験したからこそ断言できるのは、薪ストーブと燃料が同じなので熱を生み出すフェーズは知識を利用できるけれど加熱と冷却を激しいサイクルで繰り返す環境は全くの別物と言っても良いし、私自身過去の経験や失敗を踏まえて今の形に行きついた。
展示室と同じドアが欲しいという依頼
そんな私に、tenのオーナー達也さんから是非とも蓄熱ストーブのドアを作ってほしいと依頼されたのが半年ほど前。
4月に入りストーブを構築する段階になったので、どんな形状を希望されるか確認すると、私の展示室に置いている蓄熱ストーブのドアと同じものが欲しいという答えだった。
通常このドアと天板は、通常は単体での販売を行っていない。
なぜなら一見簡単に見える形だけど、過去の失敗を活かして長く使用できる形状を設計に盛り込んでおり、ストーブ本体とセットでの提供を基本としている。
ただ、仲良くさせて貰っている方へのお祝いも兼ねて、今回は特別に引き受けることにした。
途中で高価な耐熱ガラスを割ってしまい後悔

今回は短納期だったのでいつもは絶対にしない残業と休日出勤を行い、なんとかたどり着いた最終確認の段階で、ガラスを固定する金具とガラスを接触させてしまい、耐熱ガラスを割ってしまった。私の記憶では、製品に取り付けるガラスを破損したのは初めてのことだし、割った瞬間に自然と大声で叫んじゃったのが恥ずかしい。
幸い、予備として1枚保管していたものがあり、納期には影響しなかった。ただ、この失敗を受けて、今後はガラス取り付けの最終工程で金具との接触を避けるための当て材を必ず使う手順に変更した。気をつけるという意識だけでは再発は防げない。手順で防ぐ。
サウナ環境だからこそ、耐熱塗装にはプライマーが必要

塗装工程は、部品制作より時間がかかると最初から想定していた。理由はプライマーを使うからだ。
通常の耐熱塗料の単層塗装でも黒く仕上がるが、防錆機能は十分ではない。サウナ環境は水蒸気・高温・結露が繰り返される。この条件下では、防錆処理なしの耐熱塗料は短期間でサビが発生する。プライマーを下地に入れることで防錆性能は大きく向上するが、メーカー指定の硬化時間が12〜17時間必要なため、下塗りと仕上げの間に最低1日の乾燥時間を確保しなければならない。結果として塗装だけで2日を要した。

さらに今回は、仕上げ塗装後に吸気ドアの開閉クリアランスが想定より渋く、操作感が私の中にある基準に達していなかったため、塗装を一部剥がしてクリアランスを微調整し、再塗装するという工程が加わった。給気ドアの開閉精度はストーブのコントロールに直結するため、ここは妥協したくなかった。
想定外の作業が重なったが、今回はなんとか希望の納期に発送することができた。私が作るドアが届かなければストーブの組み上げができないという制約の中での作業だったため、余裕のあるスケジュールではなかった。
今回の制作で改めて確認できたのは、サウナという過酷な使用環境に向けた部品は、通常の薪ストーブ向けよりも塗装・気密・操作性のそれぞれで一段階上の基準が必要だということだ。この基準は今後の制作にも引き継ぐ。

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