職人営業マン
小さな事もしっかりと実行
先週パイプを曲げる記事を書きましたが、現場で原寸を拾っているとこのような話をされました。
「今現在、パイプに取り付けるセンサーの高さ調整機構がなくて、調整に手間と時間が掛かって困っている。なにか安価で、簡単に、それでいて壊れない物を考えて、ついでに更新出来ないでしょうか?」
客先では私が気付く事が無い困りごと事を、ユーザー様自身の文脈で話して下さるので、お客様のご相談は何でもお伺いする様にしています。
お客様は、困りごとをストレートに話して下さいますが、解決方法を持ち合わせている場合は殆ど無く、問題を解決する方法は、私があれこれ考えます。
今回のご希望は、金属に反応するセンサーの位置調整ですが、カム機構を入れたり、スプリングをかましたり部品点数を増やす方向に考えるのはとっても簡単なのですが、部品点数を減らしてシンプルにするのは難しいのです。
部品点数が少ないシンプルな機構は、できあがりを見ると誰でも考えつきそうな簡単な形をしていますが、これこそコロンブスの卵で形を見るまで誰も思いつかない事が多いです。
今回のご要望も、「出来れば考えて下さい。」見たいな感じで話が終わったので、使いにくい現状を使い回しても良かったのですが、小さな口約束もしっかりと相手の期待を超える物を提供すべし。と知人のスーパーセールスマンのブログに書いていたので愚直に実行しています。
ただ単に伝言ゲームの様に顧客に言われたことを職人に伝える営業スタイルも、素敵な仕事だと思いますが、職人が営業を行うとお客様の困りごとや、解決へのアプローチ、納期、価格などを現場でご相談出来るからお客様が安心感を持ってお話して下さると感じる事が良く有ります。
それこそ実務経験のストックがあるからこその特典なので、現場経験のある職人が営業の実務勉強をじゃんじゃんすべきだと思います。とは言え最初の頃は自分が何を話しているのか分からない位、上がったり、見積もりを失敗してしんどい思いをしたりしましたが今となってはそれも良い経験の一つだと思えます。
家電の様にカタログに掲載されている、画像で商品を理解できる商材を扱うのでなく、1品1様の特注を扱うのはルートセールスとは異なる物作りの力が必要ですし、提示された図面から製品を作るのでは無く、客先の現場を訪問して問題解決のレシピを考えなければならないので模倣困難性はとても高い仕事です。
私が逆に仕事を頼む立場なら、現状に困っていて、雑談レベルで要望を話すとしっかりと期待以上の物で対応してくれると、次回も困りごとがあると相談したくなります。これこそ(成果)を得たいならば(問題解決能力)の向上を図るべしと言う考え方と一致する訳ですね。
今回は直ぐに解決策が浮かんで来ませんでしたが、今朝何となく思い浮かんだ形を作ってみて、完成形を見て「これは良い」と思えました。
センサーを取り付ける金具をねじることで曲げ方向に対する強度を保ち、中央のネジを緩めて長穴で高さ調整を行います。 タップが立っている鋼片は溶接で固定します。
おー めちゃシンプル。
簡単で安価。おまけに要望はばっちり解決しているので後は設置するだけですね。
こんな簡単な事も、形になるまでは誰も実行しない。 シンプルこそが難しい。