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上向きで折れたネジを抜く技法

 
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仕事の中で、折れたネジを抜いて欲しいと言う依頼が有ります。

僕の所に依頼が来るのは、条件の悪い、ハイリスクで、誰もやりたがらない物ばかり集まってくるので毎回が真剣勝負です。 今回は機械装置に折れ込んだネジを抜くお話しをします。

最初のコンタクトが全てを決定する

まず、上向きの折れたネジ抜きは姿勢が悪いから疲れるのが早い! 下向きの倍くらい疲れます。 

また、下向きでは溶接で抜ける状況でも上向きでは溶接出来ないのでネジを抜く手段に限りがあります。

今の主流はオーソドックスに中心へドリルで穴を開け、逆タップで抜き取ります。

本体よりもネジが折れた部分が飛び出しているのなら、どんなにネジが痛んでいようと溶接などで回転トルクを増やす方法を採用するのですが、本体よりとツライチもしくは本体よりも沈み込んだ場所のネジを抜く場合は逆タップで対処します。

その場合一番大切なのが、しっかり中心へ下穴を開けるこの一点がネジ抜き仕事の一番のポイントなのです。

折れたネジの破断面が水平だったらドリルで穴を開けようとアプローチしても、切先が逃げること無く安心なのですが、水平に破断することなど殆ど無くて大体斜めにネジが破断しています。

なので、斜めの中心を狙いポンチを打って、ポンチの溝より少し大きい下穴でアプローチして行きます。

なぜ中心が大切なのかと言うと、中心がずれて穴を開けてしまうと、ネジを抜き去ろうと逆タップを打ち込んだ時に、タップが切ってあるねじ穴側面に逆タップが衝突して簡単にネジを抜くことができなくなるからです。 要はすっごく面倒くさい状況を自ら作り出してしまうと言う事です。

2つの問題点と解決方法

ここから慎重に2つの問題点を見極めながらアプローチして行かないと、とんでもない失敗を犯すので落ち着いて作業に取り組まなければなりません。

1つ目は、高張力鋼のネジが破断すると、破断面が表面硬化して通常のドリルでは全く歯がたちません。

ドリルで穴を開けないといけない場面で、破断面がびっくりする位硬化して、ドリルの歯が滑って焼き付いてしまいます。最初対処した時にはドリルが食いつかず滑る理由が分からず面食らってしまいました。

この場合、焼き入れ鋼に使うドリルで硬化した表面を数ミリ除去して、通常のドリルが使用出来る硬度の場所までアクセスします。 焼き入れ鋼用のドリルは非常にもろく、歯を滑らすと直ぐに刃こぼれするので回転数と押さえつける力加減が難しいです。

2つ目は、何かの拍子にドリルが折れてしまうと、リカバリー出来る方法が無い。と言う事です。

手作業で上向きに穴開けを行うので、ドリルの切削抵抗を少なくする為に下穴の直径は2~3mmくらいからスタートします。 しかし、上方向に押さえる事に注力しすぎると、キリが引っかかった時にドリルの直径が細いので簡単に折れてしまうのです。

本体より奥まった所で、ドリルが折れてしまうと、リカバリーの方法が無いから本当に注意して作業しなくてはいけません。  そして、ドリルの直径を徐々に大きくして行き、適性な大きさの逆タップを力一杯打ち込んで一気に抜き去ります。

逆タップの粘り>ねじ摩擦力が成り立てば、ネジは抜けますが、ゴミが挟まっていたり、ネジロック剤が使われていると逆タップがあっけなく折れてしまうので、抜き去る力加減も経験が必要となります。

まとめ

おれたネジを抜くのも条件が悪くなるほど手段が絞られて行きます。 そのなかで、あれこれ試す間に持てる手の中から最適な手段を選択して行きます。

今回は、ドリルで穴を開けている間、ネジが微振動したのでネジ溝の固着が無いと判断した上での処置でしたが、固着していれば全く違う方法を選択していました。

高額な装置本体の修理なので失敗は許されず、成功して当たり前の空気の中、プレッシャーを感じる事無く、落ち着いて回りへ指示を出しながらゴールを目指せる様になるには多くの経験が必要だと思います。

 

 

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