2017/07/24

パイプを曲げて部品作り

 

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薪ストーブばかり作っているのでは無く、今回はストーブ以外のお仕事を紹介します。

パイプ曲げ

パイプを手曲げします。

機械で曲げると1点物の製作に対して手間が負担になるのと、型にはめて曲げるとパイプの外径が凹んだりシワが発生したり外径が変化するので、大量生産のマフラーなどには良いかも知れませんが、中に素材などを通過させる場合、パイプの直径をなるべく一定に保つ為にパイプの手曲げを行います。

バイクや自動車の手曲げマフラー製作と手順はまったく一緒で、パイプの中に砂を詰め、パイプの両端に木栓を打ち込んで、型紙に併せて曲げて行きます。

文章にすれば本当にあっけなく簡単そうなのですが、これが思った以上に難しい。 加熱する火加減でパイプの曲がるポイントが変化するし、均一なRに曲げるのは職人技が必要になります。

順を追って手順を説明すると。

ブリキに曲げる半径と直線部分をマーキングして、板金はさみで切り抜く。 曲げる時には切り抜いた型紙を基準に曲げて行く。

パイプの両端に木栓を打ち込み、中に目一杯砂を詰めておく。 そしてバイスに挟み準備完了。

曲げが始まる部分と終わる部分にマーキングすれば火であぶる目安になるのでお勧め。

ここから一気にあぶって曲げて行くので、写真を撮影する余裕が無く、仕上がりの写真になってしまいます。 とにかく、伸びる側を重点的にあぶり、外側の鉄を延ばす感覚で熱をパイプに与えつつ、中の砂を焼く。あくまでも感覚的な物で文章にするには難しいけれど、部分を加熱するのでは無く、全体を暖めながら仕上がりの形に寄せて行く感じになります。

あぶる竿の選択も重要。

中型の火口だとM3でもカロリーが少ないと感じるので私はガウジングの竿を使っています。 大型のトーチなら何でも良いと思うのですが、アセチレンガウジングトーチは厚板の開先取りや、溶接のコブを除去する時間が他の道具より圧倒的に早いのでガスの減りはとても早いのが難点ながら、好んで使います。 

写真の様に大体寸法に近づいてきたら、微調整を行い型紙で最終チェックを行います

ぴったり。予定していた寸法に収まりました。

この後、木栓をバーナーで焼き切って中の砂を排出します。

出来れば簡単なのですが、初心者の頃はRの途中で折れ曲がった様になったり、直径の寸法が出ず楕円形になったり散々でした。 今回は比較的曲げやすい管外径と肉厚の組み合わせでしたが、肉厚の薄いステンレスパイプを曲げる時などは本当に気合い入れないと直ぐに失敗しちゃうので、今でも苦手です。

まとめに代えて私的職人観

私が工場で砂を詰めてパイプを曲げたのは約4年ぶり位なので、本当に久しぶりの作業でしたが、記憶は無くても身体が作業を覚えていたので良かったです。 

パイプ曲げもそれ自体の技能だけで無く、実際に使う場所で、どのような働きを行うのか、また図面が存在しない場合現地にて実寸法を拾って製図しなければなりません。

現地にて原寸を拾い作図する事も、長い経験が無ければ1発で出来ませんし、職人と言う物は多くの技能が積み重なり相互に使い回すことにより機能する物だと最近強く感じます。

私の事を書かせてもらうと、昔は親方や職人に後ろについて、記憶を頼りにかれらの仕事を再現出来ましたが、見たこと以外はさっぱり手出しする事が出来ず歯がゆい思いばかりしていました。頭で考えても分からない事ばかりで、迂闊に手を出して取り返しの付かない失敗をする事を恐れ消極的になっていた時代がありました。

しかし、今は何も考えていません。 考えない方が良いアイデアと間合いが生まれるからです。 

先の見通しが立たない状況でも、自分自身を信じ、心理的余裕を自分の心に作り出して、焦る気持ちから視界が狭まる状況を避ける様に気持ちを整えて行きます。

職人とはこのような技術的な向上と併せて、自分の感情をコントロール出来る精神的成熟の両輪のかみ合わせが大切なのではと最近感じる様になってきました。 私の仮説ですが、ある程度技能を身につけた職人が次のステージに到達するには、精神的な成長が大きな鍵になるんじゃないかと思っています。

 

私がこの世界に入った24年前と比べ、テクノロジーは比べる所が無い位進歩しましたが、このような泥臭い技能を伝承している若年者を見かけることが殆どありません。 私の世代を最後に、技能の断絶が目の前まで迫っているのは間違い無く、そしていざ技能伝承を行おうと思っても、今は設計段階から職人技を極力必要としない構想でデザインされるので物件を経験できる場面が無いのが現実です。

 

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