サウナストーブ開発日誌 1

私はこれまで10年以上にわたり、薪ストーブの設計・製造・検証を繰り返してきた。
燃焼構造、温度分布、材料疲労、腐食、熱衝撃
炎と鉄が出す「物理現象」を理解することでしか、長寿命のストーブは作れない。

特に公開されている技術情報がほどんど存在しないロケットストーブの長寿命化に関しては熱による摩耗劣化との戦いと言い換えても良いくらい多くの失敗と改善を繰り返してきた。

そんな私が新たな製品の開発を実施しようと心を躍らせています。

目次

現場が抱える問題点

全ての物語には全て偶然のきっかけがあり、私の物語にも偶然が生み出したきっかけが存在している。

長野県佐久市でSAUNA TEN – Birch and cloud forest -を運営しているタツヤさんとの出会いが今回のプロジェクトを進める大きなきっかけとなりました。

彼との出会いは2025年8月に京都府南丹市美山町で開催された蓄熱ストーブのワークショップ。

この文章では以後お店の名前を取ってテンさんと呼びます。

テンさんはサウナ施設を運営しているのだけど、市販のサウナストーブが1年間使い続けると本体の側面に大きな穴があいて壊れてしまう事に困っていると言う話をイベントの夜にお話し下さいました。

その時は、実際の写真を見ていなかったので、世の中にはそんな困りごとが有るのかと言う程度で深くは考えずテンさんが建築中のログハウスサウナルームや彼が訪問したバルト三国のサウナ事情などの話を聞いてその夜は終わりました。

その後3か月ほど何事も無く時が過ぎ去り、いよいよテンさんがセルフ導入する予定の蓄熱サウナストーブをくみ上げる話が具体的になり技術的な相談を話し合っていたまさにその時、実際に破損した写真を見せて頂いた時に抱いた感想は

「なんじゃこりゃ?」

10年間熱による摩耗と戦い続けてきた私には、1枚の写真を見ただけで何故そうなってしまったのか原因を想像できる。

そして私の知識と技術を使えば業務利用でも長期間使用できるサウナストーブを開発できるのかと思った刹那、久しぶりに未知へのタスクに挑戦するワクワク感が芽生えてきたのです。

本記事では、技術的な詳細ではなく、
“なぜ壊れるのかをどう読み解き、どう改善できるのか”という設計思想 を解説する。

過酷な現状の運用条件

現在の運転状況をヒアリングすると、薪ストーブにとっては非常に過酷ともいえるし施設にとっては必須の能力が見えてくる。

サウナtenでの運用状況だけが突出して過酷と言う訳では無く、運営施設に導入を行うに際しては最低限この運用に耐える必要が有ると言うベンチマーク。

燃焼は殆ど毎日12時間運転している。
・年間稼働日数:4月から12月までほぼ毎日
・ロウリュによる急冷衝撃が頻繁に発生
という、家庭用とは次元の異なる負荷がかかる。

結果、

側面鋼板の熱腐食による穿孔

バッフル変形

ガス流路の閉塞

熱衝撃による金属疲労の蓄積

こういった破損が1年で顕在化する。

これらは偶然ではなく、熱の流れと材料の特性が生み出す“必然”だ。

壊れたストーブは、内部現象を正確に語る

穴が開いた位置 → 局所的に最も高温の領域

焼け色の変化 → 温度の上昇速度と最大温度

変形 → 燃焼ガスの流れと速度

腐食速度 → 材料の組成と酸化条件

壊れたストーブは、図面以上に“現象そのもの”を語る教材だ。

サウナストーブは形が用途を決定する

薪サウナストーブは、使用者が調整できる要素が限られている。
そのため、火の性格(熱分布・放射・蓄熱)は設計段階でほぼ決定される。

  1. 金属露出 → 「刺さる熱」

裸の鋼板からの放射熱は、瞬間的で強く、局所的な高温を生む。
サウナでは、これが「熱が痛い」という感覚になる。

  1. 石・蓄熱体 → 「包まれる熱」

石は比熱容量(蓄えられる熱量)が大きいため、
時間軸の長い“緩やかな放射” をつくる。

同じ200℃でも、
・金属の200℃は「直接的で刺さる」
・石の200℃は「体の表面を均等に温める」
という性質の違いがある。

この物性差を理解していないと、
サウナ室にとって不快な熱環境が生まれる。

なぜ私がこのような事を理解しているのかと言うと、理由はずばり耐火レンガを積み上げた蓄熱ストーブの開発を行い温度変化のデータを持っているからである。

私が作ろうとしているサウナストーブの思想

本プロジェクトの設計思想は明確である。

● 目的1:毎日 12 時間運転でも 2〜5 年壊れない構造

金属疲労・熱衝撃・酸化腐食——
どれも“熱の流れ”と“材料に加わる応力”の分布で決まる。

交換式にすべき部位は交換式に。
守るべき部位には蓄熱体を。
そして炎が当たる部位は、焼損を前提とした構造に。

1日12時間連続でフル稼働を行い水で急冷する環境は一般的な家庭での使用より、私の肌感覚では3~4倍速で劣化が進む環境であると考えている。

● 目的2:「包まれる熱」を生み出す

金属露出を最小化し、
石・蓄熱体を中心に熱環境を作る。

これは単なる感覚の話ではなく、
比熱、放射率、熱容量、温度勾配といった物性値に基づく。

まとめ

今回のプロジェクトは従来と明確に異なる部分が存在する。

それは、事業者のお困りごとを私の資源を使い改善すると言う姿勢。

確かに、日本国内にも長寿命のサウナストーブはいくつか存在している。

しかし、施設運営者が満足しているのかと言えば別の話で導入した後の感想を詳しく聞いてみると、十分私が改善する余地があると判断しました。

そして今はプランニングと熱い思いだけの記事だけど、これからは実際に設計と検証のフェーズに移行して行く。

そして、今から先に断言するけど最初から思ったように上手く行くことは無くて失敗する事を想定している。

製品開発と言うものは失敗を内包しながら、失敗を教訓に地道な改善作業を積み上げる事に意味が有るので、失敗は挑戦が生み出した価値そのものと言い換える事が可能だ。

そして、この話は今後進捗が有る度に発信してゆくのでどのような展開になるのかお楽しみください。

私の個人的な狙いはもちろん成功を目指しているけど、結果が全く正反対になり落ち込んだとしてもそれも貴重な教訓となるので、どちらにせよ前に進むと言う大きな価値を手に入れていると同義と思ってます。

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