サウナストーブ破損材の「正体」に迫る― 県立工業技術センターでの分析から見えたもの ―

長野県佐久市で営業しているサウナ施設SAUNA TEN -Birch and cloud forest-より破損したサウナストーブの写真を見せて頂いた時、特徴的な外観をしていたがとても印象深かったので理由を究明したくなったのがすべての始まりだった。

前回のブログではエネルギー分散型X線分析(通称EDX)と言う装置を使い材料の分析を行った記事を書いた。

もう一度おさらいすると、EDXと言うのは金属表面にX線を投射して表面の元素を測定する装置。

しかし、それでは具体的な金属の種類を絞り込む手がかりを得る事が出来ませんでした。

もっと詳細に述べると、EDXの感度では元素の検出がばらつき何一つ断定できる材料を入手できず、唯一判明したのは別の検査を行うことが必要という事。

なので、今回は素材の正体を探す旅の最終章。

蛍光発光分析を行いテストピースに含まれている元素を調べる事に。 蛍光発光分析とはテストピースにレーザー光線を投射して発生した煙を分析して含まれている元素を測定する装置だそうだ。

詳細はググって貰えばより詳しい事が分かると思うけど、私はそれ以上の知識は不要なのでとりあえず金属の成分を調べる装置だという認識だけ持っていればOK。

目次

最初に結論

特別な鋼材ではありません。

メーカーのセールスレターには

「高品質なスチール製で、高い耐久性と耐熱性を持ち、サウナの熱源や構造部材、日常使いのツールとして、サウナの快適性と安全性を提供しています」と書かれていますがメーカーが販売店に鋼材の種類を開示する事はないので恐らくマーケッターの方が製品のイメージを高める為に作った文章だと想像。

と言うか高品質なスチールと言うのは私が県立工業技術センターの検査機器で得た分析とは大きくかけ離れる文章。

使われている鋼材は高品質とは全く異なる「低炭素鋼」です。

工業技術センターの研究員と兵庫県物作り支援センターに所属している製鉄所の分析官を退職した相談員でダブルチェックして導いた答えなので一応間違いが無いと思っている。

何度も言うけど、低炭素鋼って熱への耐久性も無いし、水に強い事も無い。

当初のイメージでは熱や水に強い特殊鋼を使用して本体を守っていると仮説を立てていたけど、実態はコストダウンと加工性を優先した鉄の箱だったのです。

この結果を見た私の率直な感想は安堵でした。

なにか特殊鋼を使用しているのであれば、鋼材の購入価格が一般的な材料に比べて2-5倍程度必要な事を想定していたのだけど、なにも特別な材料は使用しておらず構造と表面処理で寿命を管理しているのであれば現在の私の知見を利用して十分新製品の設計が対応可能。

自分自身へ勝手に刷り込んでいたイメージで実態を美化していたことが明確になった事が今回の検査で得た一番大きな収穫。

分析の手法

特許申請の相談依以来、約10年ぶりに訪れた工業技術センター。

受付で担当者に連絡をとってもらい、入管カードを受領してカードキーで検査室に入室するなどセキュリティー対策も取られており運営のスタイルが何だか新鮮。

これが今回予約した検査機器で、1時間あたり費用が発生。左側の装置にテストピースをセットして右側のモニターにデータが表示されます。

装置内部はこのようになっており、とても殺風景でした。

検査自体は機械が自動で行ってくれるので私がする事は材料の固定のみ。

テストを4回実施してデータを出力し金属に含まれている元素から使用されている鋼材を推定しました。

まとめ

私は素材を知りたいのではなく、長期間の過酷な使用に耐えるサウナストーブの開発を行うことが目的です。そして世間一般に販売されている製品の素材が参考になるかと思い知人、公的機関等活用して到達した今の答えは過去の経験を活用して思う道を進めば良いという事です。

 これから進むべき方向は、今までと違う切り口で長寿命化を確保するアイデアを思いついたので後はデザインを決めてサンプルを作るだけ。

やっとスタートラインに立てたし、材料を調べる経験は決して無駄では無く未知な課題を解決に導く貴重な経験でした。

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