ボランティアに全く興味のない僕が全力で活動してしまう話
お恥ずかしながらボランティアと言う物に全く興味が有りませんでした。そう2年前の広島県豪雨災害の被災現場を訪れるまでは。
この経験が少しだけ僕の考え方を変えてくれたのは間違いなくて、その後は心に響いたクラファンなどへ気軽に寄付できるようになりました。
しかしながら中年のオッサンがそんな簡単に替わるなんて言う都合の良い話は無くて、自分の心に響かない話は全く他人事に受けとめて、お恥ずかしながら耳を塞いでおりました。
利己主義者
口では何とでもいえるけど、僕自身ボランタリティが低いと認識しています。
もっと具体的に言えばタスクが決まっていればフットワーク軽く動くことも苦ではないけど、例えば「世の中を良くしたい」とか「行動が全体最適なのか」など大風呂敷を広げた抽象的な話になった途端に自分の興味範疇から外れてしまい話自体に意識が向かなくなってしまうと言うのが本音かな。
そんな僕へ、昼下がり大学院の友達から電話が掛かってきました。
内容は同期生有志が集い、昨今のコロナ騒動で疲弊しているであろう大学院卒業生医療コースの方々へ何かサポートが出来ない物かと考えているので発起人に名前を連ねても良いですか?と言う事だったので二つ返事でOKしたものの、一体何をすればよいのか全く想像する事が出来ず、初動にも加わること無くこのままフリーライダーで終わるのかと思っていました。
その後電話をかけてくれた友人が、MBA卒業生の集うFBグループへ医療従事者への支援を申し出る投稿をすると、沢山返信が書き込まれる中とある訪問看護ステーションの所長さんが切羽詰まった現状を切実に伝えてくれました。
勿論ぼくも惨状を伝える切迫した文章に大変な状況だとは思いましたが、今だ遠い世界の話で自分事の様に感じる事は無くホームドラマのワンシーンを眺めるように時間と伴に忘却するかと思っていました。
そう、昨夜9時までは
オンライン飲み会
時刻は午後21時。
薪ストーブのお客様へファイル形式を変換して図面を送信すべく格闘していると、大学院の友人からメッセンジャーの着信があったので受信するとグループトークになっていました。
そこにはお酒片手に陽気に話し合ういつもの顔ぶれがありました。
私は仕事を切り上げ、飲み会に途中参加してざっくばらんにFB投稿の経過や今後の活動を話し合う中で、早速防護服の代わりに雨合羽を500着ベトナムから調達の手はずを整えたと聞き、全く手伝わなかった自分にちょっと後ろめたさを感じちゃいました。
そして話題は今後の活動方針に移って行きました。
ポイントは4つ有って
- 医療現場では物資が圧倒的に不足している
- 要求される水準を満たす消耗品が全く手に入らない
- そもそも、何が求められているのか分からない
- 誰に注力してサポートすれば良いのか決めかねる
etc…勢いよく走りだしたものの、どこへ何を携えて向かってよいのか分からない状態と言う訳です。
そんな中良い感じに酔っぱらっていた僕が、ついつい思っている事を口外しちゃいました。
- 物資の不足は我々のリソースに合わせてポイントを絞る
- 国内で入手できないのなら海外を探してみる
- 要望はターゲットを設定してまずは聞いてみる
- とりあえず一番反応が良かった訪問看護の所長さんで試してみる
- これをサンプルケースとしてwebへ公開し今後の応援を募る
などをみんなに話してみると、全員「そうだな!とにかくそうしてみよう。」と話が落ち着いた後に驚愕のフレーズが僕に投げかけられたのです。
「じゃ、それを西岡さんお願いできます?」
良い感じに酔っていたのと、頼まれて全然悪い気がしなかったので二つ返事で了承し23時頃に飲み会は終了しました。
動き出す俺
理由は不明ながら、グループミーティングを終えた僕は自分の中で湧き上がる熱い気持ちを抱えたまま眠ることが出来なかったので夜分遅くにもかかわらず、面識もない訪問看護所長さんへメッセンジャーを送信して支援の受け入れを確認させて頂きました。
するとしばらくして、所長さんから返信頂き支援の意向を大変喜んでくださいました。
そうすると、なんだか目の前にいる人の為に何とか助太刀できる方策を探せないかと言う思いが、自分の中から湧き上がるのを感じたのです。
そしてその夜はKN95マスクの調達をがんばってみますと言う事で一旦話を切り上げました。
勘違い
マスクの調達を目指していた僕は、気分が上がっていたのかいつもよりずん分と早くに目覚めました。
そして昨夜の話を思い出す中で入手できるのはKN95だけど医療現場で要求されているのはN95マスク。
うーむ、なんだか嫌な予感がするな~と思いつつ検索するとN95はアメリカ3Mが製造するマスクでKN95は中国製。
そして一番重要なポイントは入手予定のKN95マスクが日本の医療現場で使用できるかどうかの使用可否なので、判断のベースとなる情報をドキュメントにまとめ、決裁者である看護所長さんへ質問してみる事にしました。
こういう場合一番重要なのは
- 1次情報に当たる
- 素早い判断を仰ぐために要約する
- 情報源のリンクを張る
司令官殿は昼夜問わず膨大なタスクが連続しているのは容易に想像できるので、一読して判断の参考になるような書類を事前に用意する事が物凄く大切だよねー。
これが、KN95マスクを入手したとして現場で使えますか?と言う感じの質問をしてしまうと、一番大切な資源である看護所長の時間を浪費する事になります。
質問内容はこんな感じ
マスクについて 2020/04/16 西岡 聖治
F様
おはようございます。
昨夜は眠かったので、朝早起きして質問事項を少し整理してみました。
私がしっかりと確認していなかったのがいけないのですが、N95マスクと思っていたのはKN95マスクという中国製のマスクになります。
NY times やCNN CDCのサイトで確認したところ、N95マスクと言うのは米国企業の製品だそうです。
米国3M社が製造するN95マスクと 中国で入手可能なKN95マスクは別物。
しかし、厚労省とFDAが使用を許可しています。
エビデンスは以下の文章。
お時間有る時にご確認どうそ。
そして質問なのですが、手配を掛けるマスクがKN95マスクでも大丈夫でしょうか?
お忙しい中すみません。
2020/4/10 厚労省よりの連絡票
https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf
○ KN95 マスクなどの医療用も マスクなどの医療用も N95マスクに相当するものと取り扱い、活用すること活用するよう努めこと(米国 FDA は、KN95 マスクなどの医療用使方 マスクなどの医療用使方
法に関して緊急使用承認(EUA)が与えられたところ。) P2より抜粋
以下抜粋
”金曜日に、FDAはKN95マスクの緊急使用許可を発行しました。中国政府により規制されており、N95マスクとほぼ同じ性能です。仕様にはわずかな違いがあります。たとえば、人が息を吸ったり息を吐いたりするときにマスクが耐えなければならない最大圧力は異なります。
CDC は、N95が使用できない場合の適切な代替としてKN95マスクをリストしています。
FDAは、KN95マスクは、それらが本物であるという証拠書類を含む特定の基準を満たしている場合、認可の対象となると述べた。”
2020/4/05 CNNより
”(CNN) 米食品医薬品局(FDA)は5日までに、中国製のKN95型マスクが一定の基準を満たせば保健衛生の現場での使用を承認すると従来の方針を撤回する見解を示した。”
一応厚労省でOKしているので大丈夫かと思ったけど、買ってから使えないと判明すればシャレにもならないので、事前確認は外す事が出来ません。
そして帰ってきた返信内容は「お願いします」でしたので送るべき物資と対象者が決定しました。
飲み会終了後僅か8時間後の事です。
算盤なき理念は戯言
次は資金の問題です。
事前に別の卒業生の方から、自分は直接動けないから資金援助で頑張らせて頂きます。との言質を頂いていたので先ずは調達するマスクを確定し必要とする予算を確定しました。
そしてKN95マスクを1000枚購入する金額を電話で確認したところ「昨日言ったじゃない、応援させて頂きますよ。」との心強いお返事に感謝!
ボランティアで活動が行き詰まるの理由の大部分はお金の話になると思うし、運営資金が無ければ我々の行動も絵に描いた餅になってしまうので本当お気持ちに感謝します。しっかり有効に使わせて頂きます。
これで、資金の目処が立ったので購入手続きを終了する事が出来ました。
まとめ
利己主義を自認する僕が一番熱くなって活動しているなんてなんだか不思議だけど、そんな事どうだって構わないんですね。
もっと掘り下げて言えば、考えや気持ちなんて関係なくて行動していれば気持ちが上がって来るのをすごく感じます。
昨夜までは抽象的で何をやればよいのか分からなかったけれど、一つずつ不明点をつぶして行く過程でその状況で必要とされる行動が開けてくる感覚が面白い。
例えるなら、ふもとから山頂は見えなくとも上って行く間にどんどん進むべき方向が判明する感覚かな。
今経験している事の全てが平常では経験する事の出来ない特別な体験だと思うし、規模の大小、粒度の差を気にしなければ誰だってその状況にアクセスできると思います。
今後の課題
自分が考える今後の課題は以下の通り
(外部環境)
今は非常時なので注文した商品が手元に届くか不明確
継続的な運営を目指すのであれば資金調達方法の模索が必要。これはクラファン等にチャレンジするのも良いかな。
(内部環境)
コミュニケーションを簡素化しつつ、効率的に行うためグループの連絡にchatworkなどを利用する。
いつもの当たり前だと思っていた前提条件が実はすごく有難い環境だったのだと日常が崩れる事で認識する事が出来ました。
今更時間を巻き戻どす事は出来ないので、過去の思い出に固執することなく変化に対応できればと思っています。
そういえば昨夜の飲み会からたったの24時間しか経過していないのに、ものすごく濃密な1日だった。