多くの鉄工所はメーカーへの転身を望むが実現できない
五月連休の最後は、市内の工具商社の社長様ご一行が見学にお越しくださいました。
僕は社長さんとご紹介いただいた僕が先生とお呼びする産業技術大学校の講師の方のお二人がお越しになると思っていたら、合計7名もお越しくださり、普段1人で作業している工場の椅子が足らなくなっちゃいました。
その中に僕と同じ業種の鉄工所の方が2名お越しになられていました。
多くの鉄工所はメーカーへの転身を望む
ストーブの話だけでなく、何故僕が薪ストーブを作り始めたのかも含めたお話をする中で社長さんが
「鉄工所と言えば、多くの場合どこかの下請けな訳じゃない。そして下請けは無理難題や制約の中で何とか仕事を回しているので、多くは西岡さんの様にメーカーとしての転身を望むけれど実現できない。」とお話になった事がとても印象に残っています。
僕が鉄工所の方に「なぜメーカーに転身出来ないのですか?」とお伺いしたところ
出来ない、経験がないなどお話下さると伴に、過去には専用機でシェアを確保していたけれども時代の変遷で需要が減少しているともお話下さいました。
ただ、技術開発と物作りへの情熱、自負をお持ちになっているのも強く感じました。
過去の僕も同じ思考回路だったので返答して下さった意図がよくわかります。
しかし、僕なんかがいうのは厚かましくもあり分不相応ですがあえて言うと、営業勘、若しくはマーケティングセンスへの資源配分に焦点を当てることで目標へ近づいて行けるのでは無いかと考えます。
経験でしか身に付かない
僕自身の小さな経験を振り返れば、薪ストーブを作り始めて3年間はどのように販売して良いか分からず、また魅力ある製品開発も出来ず、構造の因果関係すら理解できていない、まさに好奇心しか持ち合わせていない状態で集客を行っていました。
その当時は如何にして売るかと、薄っぺらな販売テクニックを模索していました。
勿論ある程度のテクニックが通用する場面は有るにせよ、長期的に信頼を勝ち取るサイクルまで導く事はほぼ不可能だと考えます。
しかし、お客様からのご注文を経験して行く中で僕なりの感覚を掴むことが出来ました。
一つ断言できるのは、顧客を喜ばす事が出来るのは顧客自身だと言う事です。
そんなの当たり前だよ。そう思うかもしれませんが、僕が出来るのはお客様が楽しい生活を営むツールを入手するお手伝いで、それ以上は不可能なのです。
もっと極論すれば、顧客が楽しくなるイメージを伝える事が仕事なので、対面する前に多くのプロセスが終了していると思っています。
誰を顧客に設定するかで方針は変わりますが、僕は技術的な優位性を頭で理解できる製品ではなく、所有する事でテンションが上がる製品がここに有りますよ~とwebを通じて発信することが大きな仕事だと思っています。
模倣の限界
鉄工所なので、僕の製品を完全コピーして販売する事も勿論可能です。
しかし3点大きなリスクが発生します。
1)価格問題
後追い製品なので僕以上の価格で販売する事が困難だし、ブランド構築が出来ていない中で認知されるまでに多くの時間を必要とする。
また、僕に「偽物が出回っていると言われたら」レッテルを挽回するのが非常にしんどい。
2)技術的因果関係
お客様の質問に理路整然と回答できるまでには、自分で実験と検証を積まなければ技術体系が身に付かない。
また、設置状況に応じたカスタマイズの引き出しが少ない
核心部分は特許で押さえて、商標も取得して模倣の防衛措置をとっているからパテントクリアランスが難しい。
3)ブランドが無い
これが一番痛い所です。
過去実績がない中で販路を広げるって本当に難しい。
こればかりは前提条件が実行者により異なるので行動を起こして改善するしか方法が無いと思います。
なので、市販品をコピーをする事で製品の開発リードタイムを短縮する事は大いに可能でも販路の構築を同時進行で進めなければ事業機会のロスに繋がる。
まとめ
物作りに自負があるのであれば、是非ともマーケティングを勉強する事をお勧めします。
そして、一通り学んだらいつまでも座学ばかりせずに、実践してみて当初の計画との差異を修正する事が非常に勉強になります。
僕自身全く知識のない分野でしたが、背水の陣で取り組み最近になって自分なりの型を感じる事が出来るようになりました。
そうなるにはマインドセット、日本語で言えば心の置き方を変える必要も有るので総合的な取り組みが必須かな。
合気道の師匠から「形ではなく状態を大切にしましょう」と教わります。
頭で知識を得る事も大切だけど、実際に行動を起こして遭遇する心の動きを感じる事がビジネスだけでなく、気持ちの良い毎日を送るうえで大切な姿勢だと私は考えます。