暖炉の改修を依頼されたけど無理だった話

3月に納品したお客様からのご紹介で、廃業したフランス料理屋さんの空き店舗を使いお菓子のセントラルキッチンとイートインスペースを作りたいお客様から「テナントに備わっている暖炉が使えるか見てくれますか?」とご相談されました。
お困りごとを相談頂けるなんて僕も光栄だ! とは思うのですが、暖炉はそれだけで一つのジャンルだし僕自身実物を見るのは未経験なのでハッキリとした判断を下せるか未知数ながら、新たな知見を得るチャンスだと思い調査を開始しました。
運用している成功事例を見学
まずはオーナーが別場所で運営しているお店に備わっている成功事例を見学させて頂きました。
暖炉は開口部と煙突直径、長さの比率が大切だとは聞いていましたが初めて見る10インチ(25センチ)の2重煙突の迫力にびっくりです。
内径が25センチなので外形は30センチ。いつも使っている煙突より10センチ直径が大きいだけで2倍くらい大きく見えます。
薪を燃焼させるスペースの上は換気扇フード状になっていて上昇した煙が煙突へ吸い込まれるように設計されており、ドラフト調整の為に排気ダンパーの開度を固定して圧力を設定していました。
構造自体は簡易なので、開口部と煙突の比率が分かれば僕でも設計できると感じました。
多分3~5現場作ってみたらおおよその感覚を掴むことが出来るだろうし、暖炉の本場であるヨーロッパの情報を検索したらドラフト関連の知識も入手可能でしょう。
お店は喫茶スペースになっており、店員さん曰く去年から使い始めて最近煙がすこし逆流する様になってきたとお話になっていたので、そろそろ煙突掃除の時期に差し掛かっているのかな。
とにかく、成功事例をじっくりと見学する事ができたのと、オーナー様の配慮でケーキセットをご馳走になり満腹でお店を後にしました。
暖炉風インテリア
そして翌日、ご相談された現場へ勇んで訪問です。
お店の正面左側にレンガで作った煙突がありました。
ただし、いつもよく見るはずである煙突の先に付いているはずのトップが…無い。なぜなのか?
とりあえず朝いちばんに2連ハシゴを現場へ置いて、日中は別現場へ仕事に向かいました。
そして、夕方オーナー様にご挨拶すると伴に暖炉のチェックです。
家主さんが暖炉を作って貰ってから数回使った見たけど、煙の逆流がひどくて使い物にならなかったそうです。
オーナー様のご希望は、せっかく付いているので薪を燃やして運用したいとの強いご希望なので僕も念入りに調べました。
先ずは煙突内部をチェック。
煙突の中ほどで建物の躯体が煙突を半分くらい塞いでいるし、ブロックを積んだだけの煙突にどれだけの気密性が有るのか非常に怪しい。
そして致命的な欠陥その1が露呈しました。
それは
燃焼室の天井が水平になっているんです!
そんなの煙がお部屋へ逆流するの当たり前じゃ無いの。
煙は高いところへ上がって行くので、燃焼部の上は絶対に漏斗形状で作って頂点に煙突が接続されるのがセオリーなのに、なぜか水平。
そして煙突は水平部分の一番奥側。
絶対にうまく行かん奴やん。
致命的な欠陥その2
煙突風の出っ張りに、煙の出口が殆ど開口していません。
僅かに側面へ排気口が付いているだけで、燃焼機構を全く無視した潔い設計に脱帽です。
ここまで燃焼機構の原理を無視した装置は初めて見るのでとても勉強になります。
見学した時点では何とか使えないかと考えていましたが、翌日長野県のプロに相談してみると「最初から動かない物は何やっても治らないよ」の一言で改造プランを中止する事を決意してオーナーへ連絡させて頂きました。
まとめ
断言は出来ませんが、燃焼機構に関しては素人の人が見た目だけ模倣した、正真正銘の暖炉風インテリアです。
作る費用はしっかり掛かったと思うのでちょっと勿体ない気もしますが、薪を使い暖房したいと思ったら建築のプロでは無く燃焼装置のプロにご相談されることをお勧めします。
現地調査のついでにオーナー様に喫茶店の煙突掃除をお勧めさせて頂いたところ、僕に煙突掃除のご依頼を頂いちゃいました。
今まで個人的に使うにはアマゾンで売っている中国製の掃除ブラシを使っていたんですが、今一つ品質に信頼が持てず仕事で使うには心もとなく感じていました。
勿論、イギリス製のロッドステーションと言う煙突掃除用品が売っているのは知っているけどお値段がアマゾンの約10倍するので購入決断に至りませんでしたが、薪ストーブ屋さんと煙突掃除は切り離せないお仕事なのでこれが良い機会だと思いネットで発注しました。
今は到着するのを楽しみにしています。