KD01に高木製煙突を追加する
2重煙突のメーカーは星の数ほどあれど、最も精度が高いのは国産の高木製なのは間違いないと思っています。
今回はKD01へお預かりした高木煙突を横出しにインストールするお話です。
初めての高木製
ストーブに興味の無い方は煙突なんてどこの製品でも一緒かと思うかも知れませんが、本体以上に重要な部分で慎重な設置が求められます。
ストーブ屋さんの仕事と言えば、効率の良い煙突配管とメンテナンスも含めたお客様が楽な運用の提案なので、一見簡単そうに見えますが、かなり経験が物を言う世界だと私は思っています。
私はピンタレストなどで薪ストーブの導入事例を見ることが好きなのですが、
煙突掃除の動線を全く無視した施工
室内がオールシングルであり得ない回数の折り曲げ
軒に近い煙突トップで強風が吹けば室内へ煙が逆流するであろう屋根との離隔距離etc….
そこそこ有名な設計事務所のプロモーションでもそのような事例を見ることがあるので工務店=薪ストーブに詳しいとは成り立たないと考える方が良いのではないでしょうか。
薪ストーブは暖められた空気が生み出す自然の浮力を利用した燃焼機関で、アナログだからこそ模倣が困難だし高性能を出そうと思えば吸排気のを微妙なバランスの上に構築しなければならないので、単に焼却炉に煙突が刺さっていると勘違いなさらぬよう!
煙突の入荷
煙突が入荷したので仮組をして検品を行います。
今回はホンマの煙突を取り外して高木製に入れ替える作業になります。
同じ煙突でも、製品の精度が全く違いますね。
特にジョイント部分の違いが大きく、高木製はプレスの密閉構造で長期間の使用でも全く劣化しない配慮がされているし組み付けの精度も高い。
対するホンマはプレスの切り欠きのみ。
このあたりのジョイントに関する違いは大いにあって、10年を超える長期間の運用を考えずっと使うことを考えるのであれば高木製はメリットが大きいと考えます。
そして、煙突内部の仕上げも丁寧。
通常型の薪ストーブはストーブ本体から発生した可燃性ガスにより煙道燃焼が起こるので煙突内部の強度がしっかりとした製品を選ぶ事がベターです。(写真はダンパー内部)
良く見る本体出口からシングル煙突に鋳物製の排気ダンパーを付けた施工は、ダンパーの熱劣化が激しくて数年の使用でボロボロになっている事が多いです。
では、ヒミエルはどうかと言うと
構造的に燃焼ガスが直接煙突に暴露することが無く、排気温度は約220度以上には上がらない様に設計しているので通常型薪ストーブほど熱劣化を考慮する事は不要です。
熱効率を上げる為にシングル煙突部分を設けもっと排気温度を下げ、お部屋の暖房に熱を使うことも可能なのですがそうすると煙突トップから木酢液が大量発生するので、意図的に排気温度を200度台に設定しています。
木酢液の酸性は強力で、コンクリートを溶かし、金属製の屋根板に穴を開けてしまいます。
いくら発生した熱を暖房に使いたいと言えども、家にダメージを与えてしまっては本末転倒なのでヒミエルは本体出口から2重煙突を施工しています。
遮熱板の製作
横出し部分の遮熱板を作っていなかったので、煙突の接続前に遮熱板を作ります。
先ずは穴位置をケガキます。
けがきを終えると、プラズマカッターで切断します
薄い鉄板を切断する場合、ガスだと熱によるひずみが大きいのでプラズマカッターが活躍します。
高木煙突の接続
本体出口から取り出す、シングル→2重煙突アダプタはメーカーによって微妙に寸法が異なるので高木製に合わせて新規に製作します。
フランジにアダプターをセットして確認します。
確認が終われば本体へ取り付けて行きます。
そして、T管、ダンパーを接続します。
煙突を傷つけないよう養生は必須です。
そして、この後バイパスの設置と煙突を接続。
クランプで煙突の塗装がはげてしまうとだめなので、新聞紙で入念に養生しテストに備えます。
樹脂は熱で溶けちゃうので外し、新聞は残しておきます。
燃焼テスト
煙突の設置が終われば、気温35度の工場で燃焼テストを行います。
こんなに気温が高いと焚き付けの時、良く燃えない事が多いです。
なぜなら温度の高低差が大きいほど浮力が増すので、外気温が高くて燃焼温度が低い焚き付け時は煙の逆流が発生しやすい環境なのです。
そして、いつも通りの点火
煙の逆流等一切無く順調に炎が大きくなって行きます。
ここまで大きくなると、後はいつも同じく順調に燃えて行くので割愛させて頂きますが
今回は十分に実験時間を取ることが出来なかったので、次回は巡航運転から火力調節までを検証したいと思います。
まとめ
高木、ボルグシステム、ホンマの3社の煙突を分解した経験から3社とも断熱材は全て一緒のイソウールでした。
なので断熱性能は殆ど同一と想像します。
そして、決定的に異なるのは接続部分の加工精度と溶接外観。
屋外で煙突を接合する場合、接続部分から毛管現象で水分が断熱層に染み込み断熱材が劣化するので、物理的に水分を寄せ付けない高木製を使うのは良い考えだと思います。
とにかく、今回は高価な預かり物の煙突に穴を開けて加工する作業だったので養生にとっても気を遣いました。
テストで良い感じに仕上がったので、次回からはお客様へ納品するストーブの製作に着手したいと思います。