薪ストーブの火災対策
薪ストーブで最も恐れる火災について
私は薪ストーブの揺らめく炎を眺めるのが大好きです。自分で作り始めて数年が経ちますが今でもテストを行うと、仕事の手を止め炎に見入ってしまいます。
薪ストーブって100万円を超える輸入物のブランド品から、5千円買えるホームセンターに売っているブリキの時計型まで多種多様な形を買うことが出来、どのストーブを選んでも、性能の違いは有るにせよ自宅で炎を眺めながら楽しいストーブライフを送ることが出来ると思います。
薪ストーブ導入を考えて雑誌やネットで値段や形を選ぶのなら、本体や煙突ばかりに注意が向きがちですが、一番大切なのは大切な家が火事にならない設置と運用を知る事だと私は思います。
設置した時の見栄えやストーブの性能なんかは、売り手の広告がふんだんにありふれているので真っ先に目が向いてしまいがちですよね。
そのような情報も大切ですが、防火対策や、ストーブ導入後の運用するソフト面の情報提供は直接的な売上に繋がらないのでストーブ販売店の姿勢で顧客に伝える情報量に大差があると思います。
ストーブ販売店や住宅会社に設置を一任する方法もありますが、防火対策の知識は全ての人が最低限持つべきだと私は考えます。
今回私は、薪ストーブ導入時に考える低温火災対策についてお話しします。
ストーブ導入時に考える低温火災対策
ストーブ設置で気を付けなければいけないのは、輻射熱のコントロールです。
輻射って何やねん?とお考えの方。
簡単に言えば、炭火になんかに手をかざすと感じる熱の事です。
丁度白熱球の光の様に、熱源を中心に放出し、その力は距離の2乗に反比例して減ります。
物理的に厳密な話は一旦横に置いて、温度の高い熱源から空気を挟んで低い物体に当たった時発熱します。
じゃ輻射熱で何が起こる可能性があるかと言うと「低温火災」です
昔は住宅でガスコンロで煮炊きしていると、壁の内側から煙が立ちこめてあわや火事になりかけた。
そんな話を聞いた方もいると思いますが、輻射熱をしっかり遮断する事が大切です。
薪ストーブに関する規定で大切なのは
1秒間あたりの発熱量が18[kW]以下であること。
壁と薪ストーブ外面との最低離隔距離。
遮熱板に必要な空気層25mm以上。
遮熱板は特定不燃材料(9.アルミニウム 11.ガラスを除く)
などの規定があります。
ざっくり言うと壁からの距離、遮熱板、壁と遮熱板との距離が25mm以上必要と言う事です。
遮熱板と25mmの空気層がとっても大切
ストーブ背面や底が熱くならない様にヒートシールドが付いたストーブもありますが、写真のようにストーブの背面と下をタイル張りにしていると、ストーブから発生した輻射熱がタイルに蓄積されて凄く熱くなります。
タイルの下地が石やレンガでは無く、木材だとタイルに蓄熱した熱が木に伝わって低温火災のリスクが発生します。
ストーブを部屋の真ん中に設置して壁まで十分な距離があれば良いのですが、遮熱板の形状は鋼板やケイカル板だけでは無く、レンガ積みの遮熱壁も含み、ストーブから住宅へ放出される輻射熱を遮る物が必要になります。
そして、遮熱板と住宅の内装距離は25mm以上の空間が必要になります。
なぜ25mmの空間が必要かと言うと、遮った熱を対流で放出する為です。
一旦空気の層を挟むことにより室内の壁が高温になることを防ぐ事が目的です。
実験
(その1)
背面と左側面にヒートシールドを取り付けず4時間連続燃焼して背面の遮熱板の温度を測定。
遮熱板と本体との距離300mm。 非接触式温度計で測定した4時間後の遮熱板温度は240度を超えていました。
遮熱板が住宅に密着していると、とても危険だと改めて実感しました。
遮熱板の後ろに板を立てかけましたが、とても熱かったです。
自分の家では絶対にやりたくない実験です。
(その2)
背面と左側面にヒートシールドを取り付け、遮熱板を300mm離して設置。遮熱板後ろ25mmに板を設置。
4時間燃焼した後の温度は、ヒートシールド250度位、遮熱板70度位、板40度と言う結果になりました。
実験から分かる大切な事
輻射熱は電磁波と一緒なので不燃材で遮るとそれ以上進む事は出来ません。
しかし、遮った不燃材が発熱するので、空気の層を設けて断熱します。
空気は暖まりにくく熱を運びにくいので格好の断熱材なのです。
まとめ
大切な財産を守る為、薪ストーブを設置する場合、遮熱板は内装から25mm以上離して十分な空気層を設けて下さい。
ガラスは電磁波を透過するので遮熱板に不適です。
見栄えを良くする方法はいくらでもありますが、とりあえず断熱性能だけでも満たしたいのなら、波板やホームセンターのブリキを使って機能は十分果たすと思います。
火災予防は十分すぎるくらいで丁度だと思います